アルギニンは肝障害を予防・改善します!
〔アルギニンは、アルコール性肝障害および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を予防・改善します〕

まとめ

 

  • アルギニンは肝細胞保護作用を示し、化学物質による肝障害を改善しました。その作用は一酸化窒素(NO)によるものと考えられました。
  • アルギニンは、アルコール性肝障害モデルにおいて、脂肪肝を強力に抑制し、肝細胞の壊死と炎症、および線維化を大幅に抑制し、エンドトキシンと脂質過酸化の増加を抑制し、血流増加作用を示し、炎症性サイトカインの増加を強力に抑制しましたので、アルコール性肝障害を予防・改善することが期待できます。なお、アルギニンのこれらの働きは、アルギニンから生成したNOが関与しているものと考えられます。
  • アルギニンは、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の危険因子である肥満(特に内臓脂肪型肥満)(最も重要な因子)、メタボリックシンドローム、2型糖尿病(インスリン抵抗性)、脂質代謝異常症、高血圧などを改善しますので、NAFLDを予防・改善することが期待できます。アルギニンは、脂肪肝を抑制しますので非アルコール性脂肪肝(NAFL)を予防・改善することが期待できます。アルギニンは、肝臓において、脂肪肝、脂肪空胞変性、炎症性浸潤、壊死、微小血管の変化、酸化ストレス、炎症性物質などを抑制して非アルコール性脂肪肝炎(NASH)をほぼ正常化しますので、NASHを予防・改善することが期待できます。アルギニンのこれらの働きは、アルギニンそのものによる作用や、アルギニンから生成したNO(一酸化窒素)によるものと考えられます。
  • アルギニンは、アンモニアによって引き起こされた昏睡を抑制しました。
  • このように、アルギニンは、アルギニンあるいはNOの作用を介して、肝細胞を保護し、肝障害を改善しますので、アルコール性肝障害やNAFLD(NAFLおよびNASH)、あるいは食品添加物、医薬品などの化学物質による肝障害に効果を示すことが期待できます。また、アルギニンは、アンモニアの代謝(解毒)を促進することで肝性脳症に効果を示すことが期待できます。
  • アルギニンはヨーロッパでは実際に肝障害の治療に使われています。
  • アルギニンは、ついつい飲みすぎる方、最近肝臓が弱っていると感じる方、食品添加物や医薬品などによる肝障害が心配な方、肝機能異常を指摘された方、肝障害〔特にアルコール性肝障害や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)〕でお悩みの方におすすめします。アルギニンはアミノ酸で体に必須の体内成分ですので副作用の心配はほとんどないと考えられます。実際数多くの臨床試験でアルギニンによると考えられる副作用はほとんどありませんでした。

図.アルギニンのアルコール性肝障害および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)予防・改善作用

【図の説明】

◎アルコール性肝障害

  アルコール性肝障害とは、長期にわたって大量のアルコールを飲み続けることで肝臓に障害が起こることをいいます。アルコール換算で男性30g/日(ビール換算で約600ml)以上、女性20g/日(ビール換算で約400ml)以上の飲酒量でアルコール性肝障害を発症しうるとされています。大量のアルコールの長期摂取によって、肝臓において、トリグリセリド(中性脂肪)の蓄積促進、アルコールの分解(代謝)によって生じたアセトアルデヒドによる肝細胞の障害、酸化ストレスの昂進(過酸化脂質の生成)、血中エンドトキシンの増加、肝の血流不足、炎症性サイトカインの生成などが引き起こされます。先ず肝臓における脂肪沈着によってアルコール性脂肪肝が、ついで肝臓の炎症、肝臓組織の変性・壊死・線維化などによってアルコール性肝炎が、最後にアルコール性肝硬変(および肝がん)に至ります。アルコール性肝硬変は、アルコールによる肝障害が進行し、肝細胞の壊死、繊維化など肝臓の組織の変化が進んで、小さな結節ができ、肝臓は縮んで小さくなります。この段階になりますと禁酒によっても元に戻りません。このように肝硬変は、肝臓に長い年月炎症が続いた結果生じた変化ですので、その間に肝細胞の遺伝子などが傷つけられ、肝がんが生じる危険性が高くなります。

  アルギニンは、アルコール性肝障害モデルにおいて、脂肪肝を強力に抑制し、肝細胞の壊死と炎症、および線維化を大幅に抑制し、エンドトキシンと脂質過酸化の増加を抑制し、血流増加作用を示し、炎症性サイトカインの増加を強力に抑制しましたので、アルコール性肝障害を予防・改善することが期待できます。なお、アルギニンのこれらの働きは、アルギニンから生成したNOが関与しているものと考えられます。

 

◎非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

  非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、病態がほとんど進行しないと考えられる非アルコール性脂肪肝(NAFL)と、進行性で肝硬変や肝がんに進行しうる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分けられます。NAFLDを引き起こす最も重要な因子は肥満(特に内臓脂肪型肥満)です。また、メタボリックシンドローム、2型糖尿病(インスリン抵抗性)、脂質代謝異常症、高血圧はNAFLD発症と強い関連性があります。NAFLDは、組織や画像診断で脂肪肝を認め、さらにNASHにおいては、脂肪変性、炎症、肝細胞傷害などが認められます。NASHの進展には、酸化ストレス(活性酸素の増加による肝細胞傷害)、ミトコンドリア機能異常、腸内細菌叢の変化に伴う自然免疫系賦活などが関与しているとされています。

  アルギニンは、NAFLDの危険因子である肥満(特に内臓脂肪型肥満)(最も重要な因子)、メタボリックシンドローム、2型糖尿病(インスリン抵抗性)、脂質代謝異常症、高血圧などを改善しますので、NAFLDを予防・改善することが期待できます。アルギニンは、脂肪肝を抑制しますのでNAFLを予防・改善することが期待できます。アルギニンは、肝臓において、脂肪肝、脂肪空胞変性、炎症性浸潤、壊死、微小血管の変化、酸化ストレス、炎症性物質などを抑制してNASHをほぼ正常化しますので、NASHを予防・改善することが期待できます。アルギニンのこれらの働きは、アルギニンそのものによる作用や、アルギニンから生成したNO(一酸化窒素)によるものと考えられます。

 
 
≪アルギニンは肝障害を予防・改善します!≫
 
1.肝障害とは
 
  主な肝臓の病気には、ウィルスによる急性肝炎・慢性肝炎・肝硬変、アルコール性肝障害、薬剤性肝障害、脂肪肝、肝がんなどがあります。肝疾患の最終形は肝硬変とそれを背景とした肝がんですが、その主な原因はウィルス(HBV、HCV)感染です。ウィルス感染により長い年月肝臓に炎症が続いた(慢性肝炎)結果生じます。特にHCV感染によるもの(C型)は約60%で、HBV感染によるもの(B型)が15%前後です。しかしながらウィルス感染によるものは近年漸減傾向にあり、今後、ウィルス感染に対する予防・検査体制の充実や治療法の進歩により、ウィルス感染による肝硬変や肝がんの患者数は減少していくものと考えられます。一方、2000年代以降増え続けているものに、非B非C型肝硬変や肝がんがあり、1990年代の10%前後から、2010年には25%近くまで増加しています(「肝がん白書」平成27年度。日本肝臓学会など)。非B型非C型肝細胞がんのうち半分はアルコール性肝障害、4分の1程度は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)です。なお、非B非C型の多くが脂肪肝を背景にしている可能性が指摘されています(「NAFLD/NASH診療ガイドライン2014」。日本消化器病学会)。
 
  脂肪肝の原因は様々で、種々のタイプの肝障害を引き起こします。脂肪肝は、妊娠に起因する場合、アルコール性肝疾患に起因する場合、そして妊娠やアルコール依存症のない場合に発現する脂肪肝〔非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)〕とに分けられます。NAFLDには、病態がほとんど進行しないと考えられる非アルコール性脂肪肝(NAFL)と、進行性で肝硬変や肝がんに進行しうる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分けられます。
 
  本ページでは、アルギニンの効果が期待されるアルコール性肝障害と非アルコール性脂肪肝炎(NASH))について説明します。
 
 
2.アルギニンはアルコール性肝障害を予防・改善します
 
1)アルコール性肝障害とは
 
  長期にわたって大量のアルコールを飲み続けることで肝臓に障害が起こることをいいます。アルコールは肝臓で代謝されてアセトアルデヒドになり、さらに酢酸になります。このアセトアルデヒドは毒性が強く、肝細胞は壊され肝障害を起こすと考えられています。
 
●アルコール性肝障害の分類
 
  アルコール性肝障害は、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変(および肝がん)に分類されます。アルコール性脂肪肝は、アルコールによる肝障害の最初に現れるもので、肝臓に脂肪が沈着し、肝臓の機能を障害するものです。アルコール性肝炎は、次の段階にみられるもので、肝臓の炎症、肝臓組織の変性・壊死、繊維化によって肝臓の機能が障害されるものです。アルコール性肝硬変は、アルコールによる肝障害が進行し、肝細胞の壊死、繊維化など肝臓の組織の変化が進んで、小さな結節ができ、肝臓は縮んで小さくなります。この段階になりますと禁酒によっても元に戻りません。このように肝硬変は、肝臓に長い年月炎症が続いた結果生じた変化ですので、その間に肝細胞の遺伝子などが傷つけられ、肝がんが生じる危険性が高くなります。
 
●アルコール性肝障害の原因および発症メカニズム
 
  健康な人でも日本酒に換算して毎日5合以上(アルコール120g)を飲み続けると、1週間で脂肪肝に、ほぼ10年で肝炎になり、そのうち10~20%は肝硬変になるといわれています。男性よりも女性のほうが肝障害を起こしやすく、より少量、短期間で肝硬変になります。また、個人差も大きく、肝硬変になるアルコール量や期間は個人によって異なります。
 
  アルコールは、胃および小腸から容易に吸収され、貯蔵されることなく、90%以上は代謝(分解)されます。アルコールは、主に(80%以上)アルコール脱水素酵素によって、先ずアセトアルデヒドに代謝(分解)されます。次いでアセトアルデヒドは、アルデヒド脱水素酵素により酢酸へ変換されます。慢性アルコール摂取は酢酸の生成を促進します。
 
  アルコールの代謝によって、脂肪酸の代謝(酸化)が低下し、トリグリセリド(中性脂肪)の蓄積が促進され、脂肪肝や高脂血症を引き起こします。
 
  アルコールの中間代謝産物であるアセトアルデヒドは高い反応性を有するため、タンパク質や脂質や細胞膜などに結合しそれを変性させ、肝細胞を障害すると考えられています。その過程において、炎症細胞が活性化され、TNF-αなどの炎症性サイトカインが産生され、細胞傷害を引き起こします。
 
  アルコール代謝はさらに肝の代謝亢進を生じ、、低酸素状態を引き起こし、活性酸素の生成を促進し、脂質を過酸化脂質に変え、肝病変を進展します。
 
  アルコールは、腸内細菌が産生するエンドトキシンの消化管から門脈への移行を促進し、血中エンドトキシンを増加させます。エンドトキシンは肝臓においてクッパ―細胞を活性化し、TNF-αなどの炎症性サイトカインを誘導し、酸化ストレス(活性酸素が増大した状態)を高め、肝細胞障害を引き起こします。また、これらのサイトカインは肝線維化を促進します。エンドトキシン血症は肝内微小循環障害を引き起こします。
 
  アルコール性肝障害患者の多くに肝臓内の鉄沈着を認めます。過剰に蓄積した鉄は酸素の存在下で非常に細胞毒性の強いヒドロキシラジカルを産生し、肝細胞を障害します。
 
●アルコール性肝障害の患者数
 
  アルコール性肝障害の患者数は、200~300万人といわれています。全肝硬変(40~50万人)のうち、約15%がアルコール性肝硬変とされています(約75%がウィルス性肝硬変)。アルコール性肝障害が原因の肝がんは、全肝がんのうち10%程度とされています。
 
●アルコール性肝障害の症状
 
  症状は、脂肪肝では通常ありません。肝炎の症状は、全身倦怠感、悪心、嘔吐、食欲不振などです。肝硬変では、全身倦怠感、疲れやすい、微熱、食欲不振、おなかが張る、むくみ、腹痛などの症状が見られますが、無症状の場合もあります。肝硬変が進むと、黄疸、むくみはひどくなり、腹水なども見られるようになります。さらに、食道静脈瘤の形成や破裂、肝性脳症、肝細胞がんなどがみられるようになります。肝性脳症は、肝細胞の破壊が進んで、消化管から吸収された毒性物質(アンモニアなど)を代謝し解毒することができなくなり、それが全身に回り脳に達して症状を表すものです。症状は、異常行動、せん妄、見当識障害、言語障害、はばたき振戦、運動失調、昏睡などがみられます。
 
●アルコール性肝障害の診断
 
  診断は、飲酒歴、自他覚症状、肝機能検査などをおこないます。これで異常があれば、腹部超音波検査、腹部CT、肝生検などをおこないます。肝機能検査での特徴は、γ―GTPの上昇、GOTがGPTより高値という異常です。
 
●アルコール性肝障害の治療
 
  治療は、まず禁酒です。禁酒により、繊維化のない肝障害は可逆的に改善し、肝硬変の患者の生存率も改善します。肝硬変では、禁酒した場合の5年生存率は70%ですが、そのまま飲酒を続けた場合は30%程度に低下するといわれています。栄養障害がある場合は、高タンパク、高ビタミンを中心とした栄養状態の改善がはかられます。むくみや腹水が見られるときは、食塩の制限や利尿薬の投与が行われます。食道静脈瘤の破裂に対しては手術が行われます。肝性脳症には、原因となるアンモニアなどの血中値を低下させるための治療が行われます。
 
  このように、アルコール性肝障害については禁酒以外は対症療法しかなく、直接治療する方法はほとんどありません。今後アルコール飲酒量の増加や飲酒人口の増加に伴いアルコール性肝障害も増加することが見込まれ、アルコール性肝障害を直接予防・改善する方法の開発が望まれています。

 
2)アルギニンのアルコール性肝障害予防・改善作用
 
 
  禁酒以外に、アルコール性肝炎を直接治療する薬剤は現在ほとんどありません。そのため、その治療薬の開発が世界的に切望されています。
 
  アルコール性肝炎の原因として種々提唱されていますが、アルコールの分解(代謝)によって生じたアセトアルデヒドによる肝細胞の障害、酸化ストレスの昂進(活性酸素が増大すること)およびそれによる過酸化脂質の生成、肝の血流不足、炎症性サイトカインの生成(これらによって肝細胞の障害が促進されます)などが考えられています。そのため、これらを抑制する物質はアルコール性肝炎の治療薬として有望と考えられます。
 
  アルギニンは、その構造中に含まれる活性アミノ基でアセトアルデヒドをトラップすることが期待できます。また、アルギニンは抗酸化作用や血流増加作用を示します。これらのことからアルギニンは、アルコールによる二日酔い(アセトアルデヒドがその主な原因です)やアルコール性肝炎を予防・改善することが期待できます。
 
  実際、アルギニンはアルコール性肝炎モデルにおいて、脂肪肝を強力に抑制し、肝細胞の壊死と炎症、および線維化を大幅に抑制しました。また、アルコール性肝炎の主な原因と考えられている、エンドトキシンと脂質過酸化の増加、およびそれに続くNF-κBの活性化と炎症性サイトカイン(TNF-αなど)の増加をアルギニンは強力に抑制しました。(詳しくは「①Nanjiらは、アルギニンがアルコール性肝炎を改善することを示しました」を参照ください)。
 
  なお、アルギニンのこれらの働きは、アルギニンから生成したNOが関与しているものと考えられます。
 
  このように、アルギニンは、有効な薬剤がほとんどないアルコール性肝炎の予防・改善薬として非常に有望であると考えられます。
 
 
3.アルギニンは非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を予防・改善します
 
〔非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)について、詳しくは「NAFLD/NASH診療ガイドライン2014」(日本消化器病学会)をご参照ください〕
 
 
1)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とは
 
  NAFLDは、組織や画像診断で脂肪肝を認め、アルコール性肝障害など他の肝疾患を除いた病態です。アルコール換算で男性30g/日、女性20g/日以上の飲酒量でアルコール性肝障害を発症しうるので、NAFLDの飲酒量はそれ未満となります。NAFLDの多くは、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などを基盤に発症するので、メタボリックシンドロームの肝病変と言えます。
 
  NAFLDは、病態がほとんど進行しないと考えられる非アルコール性脂肪肝(NAFL)と、進行性で肝硬変や肝がんに進行しうる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分けられます。NASHは、脂肪変性、炎症、肝細胞傷害が特徴です。
 
●患者数
 
  非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の有病率は欧米諸国では20~40%、日本では9~30%(最新の大規模調査では30%。つまり、日本人の3人に1人はNAFLDと言えます)です。年齢分布は、日本では、男性は中年層、女性は高齢層に多いです。また、男性が女性より高頻度です。NAFLDの有病率は肥満人口の増加に伴い増加傾向にあります。
 
  一方、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の有病率は世界的に3~5%と推定されています。日本での患者数は300~400万人と推定されています。年齢分布は、NAFLDと同様、日本では男性は中年層、女性は高齢層に多いと推定されています。NASHの有病率は、NAFLDの有病率および肥満人口の増加に伴い増加傾向にあると推定されています。
 
  日本での、肝硬変に占めるNASH肝硬変の割合は2%程度です。肝細胞がんに占めるNAFLD/NASHを誘因とする肝細胞がんの割合は、日本では2~5%とされています。
 
  NAFLDでは、8~21年の経過で約5~8%が肝硬変へ進展します。NASH肝硬変からの肝発がん率は年率約2%です。
 
●危険因子
 
  非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と食生活との関連において、摂取過剰がNAFLD発症・進展の危険因子と考えられているものには、総カロリー、糖質、ソフトドリンク、肉類、脂質(特に飽和脂肪酸、ω-6脂肪酸、コレステロール)があります。一方、摂取不足がNAFLD発症の危険因子とされているものに、魚類、ω-3脂肪酸、食物繊維があります。
 
  NAFLD/NASHと他の疾患や異常との関連については、肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病(インスリン抵抗性)、脂質代謝異常(高コレステロール血症、高脂血症)、高血圧はNAFLD/NASHの強い危険因子です。
 
●病因
 
  NAFLDを引き起こす最も重要な因子は肥満(特に内臓脂肪型肥満)です。またメタボリックシンドローム、2型糖尿病(インスリン抵抗性)、脂質代謝異常症、高血圧はNAFLD発症と強い関連性があります。NASHの進展には、酸化ストレス(活性酸素の増加による肝細胞傷害)、ミトコンドリア機能異常、腸内細菌叢の変化に伴う自然免疫系賦活などが関与しているとされています。
 
●症状および診断
 
  NAFLD/NASHの多くは無症状です(48~100%)。多い症状としては、倦怠感、右上腹部不快感、不眠などがあります。身体所見としては肝腫大を認めることがあります。
 
  NAFLDは、組織や画像診断で脂肪肝を認め、アルコール性肝障害など他の肝疾患を除いた病態です。NAFLD/NASHの診断の際には詳細な問診を行ったうえで、アルコール換算で男性30g/日未満、女性20g/日未満の飲酒量とします。その他診断には、トランスアミナーゼ値、肥満度、メタボリックシンドロームや耐糖能異常の評価、腹部超音波、腹部CT、腹部MRI、肝生検などを行います。
 
●治療
 
  先ず、肥満患者に対しては食事療法と運動療法を行い、体重を減少させます。これによってNAFLD/NASHの肝機能および組織像の改善が認められています。これによって効果が不十分な場合や肥満がない場合は薬物療法を検討しますが、薬物療法としては、2型糖尿病(特にインスリン抵抗性)を合併する場合にはインスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン系薬剤など)、高脂血症を合併する場合には高脂血症改善薬(スタチンなど)、高血圧を合併する場合には抗高血圧薬(アンジオテンシンII受容体拮抗薬など)などが処方されますが、肝臓に対する効果(特に肝硬変への進展予防、生命予後改善など)については十分なデータがないのが現状です。
 
  NASHの進展には、酸化ストレス(活性酸素の増加)が強く関与していると考えられていますので、ビタミンEのNASHに対する効果が検討されています。ビタミンEは血液生化学検査、肝脂肪化、および肝組織を改善することが示されました。しかし、ビタミンEの投与に関しては一般的に過剰投与、長期投与に関する注意が必要です。
 
  このように、現在、NAFLD(特にNASH)に十分な効果と高い安全性が期待できる薬剤はほとんどなく、種々の薬剤が検討されています。
 
 
 
2)アルギニンのNAFLDおよびNASHの予防・改善作用
 
 
  NAFLDを引き起こす最も重要な因子は肥満(特に内臓脂肪型肥満)です。またメタボリックシンドローム、2型糖尿病(インスリン抵抗性)、脂質代謝異常症、高血圧はNAFLD発症と強い関連性があります。NASHの進展には、酸化ストレス(活性酸素の増加による肝細胞傷害)、ミトコンドリア機能異常、腸内細菌叢の変化に伴う自然免疫系賦活などが関与しているとされています。
 
  アルギニンは、肥満メタボリックシンドローム2型糖尿病(インシュリン抵抗性)高血圧などを予防・改善するために、NAFLDを予防・改善することが期待できます。また、アルギニンは、酸化ストレスを抑制し、ミトコンドリアの機能を改善しますので、NASHを予防・改善することが期待できます。
 
  実際、脂肪の慢性投与によって作成したNASHモデルにおいて、アルギニンはNASHを正常レベルまで強力に予防・改善しました。(詳しくは「②Abu-Serieらは、アルギニンが非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を予防・改善することを示しました」を参照ください)。
 
  アルギニンは、脂肪を慢性投与する前(予防投与)または後(治療的投与)に投与した時、脂肪によって引き起こされる肝臓の脂質過酸化の増加、抗酸化物質(酵素)(GSH、GPx、SOD)の低下、TNF-α(炎症性物質)の増加、ALTおよびASTの増加などをほぼ正常レベルまで予防・改善しました。また、脂肪投与によって生じた肝臓におけるNASH様の組織学的変化(脂肪肝、脂肪空胞変性、炎症性浸潤、壊死、微小血管の変化など)は、アルギニンの前投与または後投与によってほぼ正常レベルまで予防・改善されました。アルギニンのこれらの働きは、アルギニンそのものによる作用や、アルギニンから生成したNO(一酸化窒素)によるものと考えられます。
 
  このように、アルギニンはNASHをほぼ正常化することが期待できるため、NASHの特効薬として非常に有望と考えられます。
 
 
4.肝障害〔特にアルコール性肝障害および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)〕のアルギニン療法

〔以下のアルギニンの働きは国際的な一流の医学誌や科学誌に掲載された信頼できるデータに基いたものです。詳しくは「5.アルギニンが肝障害改善作用を示すデータ(文献)」をご覧下さい〕
 
アルギニンは肝細胞保護作用を示し、化学物質による肝障害を改善しました。その作用は一酸化窒素(NO)によるものと考えられました。
 
アルギニンは、アルコール性肝障害モデルにおいて、脂肪肝を強力に抑制し、肝細胞の壊死と炎症、および線維化を大幅に抑制し、エンドトキシンと脂質過酸化の増加を抑制し、血流増加作用を示し、炎症性サイトカインの増加を強力に抑制しましたので、アルコール性肝障害を予防・改善することが期待できます。なお、アルギニンのこれらの働きは、アルギニンから生成したNOが関与しているものと考えられます。
 
アルギニンは、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の危険因子である肥満(特に内臓脂肪型肥満)(最も重要な因子)、メタボリックシンドローム、2型糖尿病(インスリン抵抗性)、脂質代謝異常症、高血圧などを改善しますので、NAFLDを予防・改善することが期待できます。アルギニンは、脂肪肝を抑制しますので非アルコール性脂肪肝(NAFL)を予防・改善することが期待できます。アルギニンは、肝臓において、脂肪肝、脂肪空胞変性、炎症性浸潤、壊死、微小血管の変化、酸化ストレス、炎症性物質などを抑制して非アルコール性脂肪肝炎(NASH)をほぼ正常化しますので、NASHを予防・改善することが期待できます。アルギニンのこれらの働きは、アルギニンそのものによる作用や、アルギニンから生成したNO(一酸化窒素)によるものと考えられます。
 
●アルギニンは、アンモニアによって引き起こされた昏睡を抑制しました。
 
●このように、アルギニンは、アルギニンあるいはNOの作用を介して、肝細胞を保護し、肝障害を改善しますので、アルコール性肝障害やNAFLD(NAFLおよびNASH)、あるいは食品添加物、医薬品などの化学物質による肝障害に効果を示すことが期待できます。また、アルギニンは、アンモニアの代謝(解毒)を促進することで肝性脳症に効果を示すことが期待できます。
 
アルギニンはヨーロッパでは実際に肝障害の治療に使われています。
 
アルギニンは、ついつい飲みすぎる方、最近肝臓が弱っていると感じる方、食品添加物や医薬品などによる肝障害が心配な方、肝機能異常を指摘された方、肝障害〔特にアルコール性肝障害や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)〕でお悩みの方におすすめします。アルギニンはアミノ酸で体に必須の体内成分ですので副作用の心配はほとんどないと考えられます。実際数多くの臨床試験でアルギニンによると考えられる副作用はほとんどありませんでした。

 

【アルギニンの摂取方法】
 
●通常のアルギニンサプリメントの場合
 
  肝障害の予防や治療にアルギニンを摂取する場合、アルギニンの摂取量は、アルギニンとして1日2~4g程度の摂取(1日2~3回に分け摂取)から始めるのがよいでしょう。その後効きめを見ながら摂取量を調節します。
 
  なお、アルギニンを摂取するに際して、種々の問題点がありますのでご注意下さい(これについては『アルギニンサプリメントの正しい選び方』をご参照下さい)。
 
 
  アルギニンの問題点を克服し効果が大幅に高まることが期待できる『進化型スーパーアルギニンサプリメント』の場合、アルギニンとして1日1g程度の摂取から始めます。効きめを見ながら摂取量を調節します。効果をあらわす摂取量は個人によって異なる場合があります。なお、『進化型スーパーアルギニンサプリメント』の場合、そのアルギニン1gは、通常のアルギニンサプリメントのアルギニン6~8g程度あるいはそれ以上に相当すると考えられます。また、アルギニンを大量(例えば1日3g程度以上)に、そして(または)長期間(例えば3ヶ月程度以上)摂取し続けても、アルギニンの効果が弱くなったり、消失したりする可能性は低いです(『アルギニンサプリメントの正しい選び方』もご参照下さい)。
 
 
●肝性脳症の治療の場合
 
  肝性脳症の治療には、1日10~20gのアルギニンを静脈内または経口投与することがすすめられています。短期投与の場合はこれで治療を行います。
 
 
●アルギニンを摂取する場合の注意点
 
  これについては『アルギニンサプリメントの正しい選び方』をご覧ください。
 
 
5.アルギニンが肝障害改善作用を示すデータ(文献)

①Nanjiらは、アルギニンがアルコール性肝炎を改善することを示しました(J. Pharmacol. Exp. Ther., 2001; 299: 832-839)
 
【目的】
 
  禁酒以外に、アルコール性肝炎を直接治療する薬剤は現在ほとんどありません。そのため、その治療薬の開発が世界的に切望されています。
 
  アルコール性肝炎の原因として種々提唱されていますが、アルコールの分解(代謝)によって生じたアセトアルデヒドによる肝細胞の障害、酸化ストレスの昂進(活性酸素が増大すること)およびそれによる過酸化脂質の生成、肝の血流不足、炎症性サイトカインの生成(これらによって肝細胞の障害が促進されます)などが考えられています。そのため、これらを抑制する物質はアルコール性肝炎の治療薬として有望と考えられます。
 
  アルギニンは、その構造中に含まれる活性アミノ基でアセトアルデヒドをトラップすることが期待できます。また、アルギニンは抗酸化作用や血流増加作用を示します。これらのことからアルギニンは、アルコールによる二日酔い(アセトアルデヒドがその主な原因です)やアルコール性肝炎を予防・改善することが期待できます。
 
【方法および結果】
 
  ラット(Wistar rats、雄)を4グループに分け、グループ1に魚油とエタノールを8週間、グループ2に魚油とエタノールを6週間それそれ与えました。グループ3には魚油とエタノールを6週間与えた後、さらに2週間魚油とエタノールに加えアルギニン(100mg/kg体重/日、胃内投与)を与えました。グループ4は対照群として魚油とブドウ糖を8週間与えました。
 
  その結果、グループ1とグループ2では肝細胞の75%以上に脂肪の蓄積が見られ、壊死巣(1.0-1.1foci/mm2)と炎症細胞数(25.8-26.2cells/mm2)の増加が認められ、アルコール性肝炎を引き起こしていました。対照群のグループ4では脂肪肝は認められませんでした。また、壊死巣(0foci/mm2)も炎症細胞数(0.2cells/mm2)もほとんど見られませんでした。一方、グループ3ではアルコール性肝炎を惹起後、さらにアルギニン投与時に同時にエタノールを投与し続けたにもかかわらず、脂肪の蓄積が見られた肝細胞の割合は25%以下に低下し、壊死巣(0.3foci/mm2)と炎症細胞数(9.1cells/mm2)も大幅に減少しました。コラーゲンの蓄積と線維化については、グループ3において魚油とエタノールを6週間与えた時点において増加していましたが、アルギニンの投与によってそれらは抑制されました(コラーゲン量は1.5%から0.6%へ有意に減少。線維化は21から11へ有意に減少)。
 
  このように、アルギニンは強力なアルコール性肝障害改善作用を示すことが明らかになりましたが、では、アルギニンはどのようなメカニズムでアルコール性肝障害を改善するのでしょうか。それを明らかにするために検討がなされました。
 
  先ず、アルコール性肝炎の主な原因と考えられているエンドトキシンと脂質過酸化について検討されました(「●アルコール性肝障害の原因および発症メカニズム」を参照ください)。グループ1とグループ2においては、グループ4(対照群)に比べ、エンドトキシンと脂質過酸化は有意に増加していましたが(5~8倍の増加)、アルギニン投与(グループ3)によってこれらは有意に抑制されました(約60%の抑制)。脂質過酸化とエンドトキシンはNF-κBの活性化を介してTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生を促進します。実際、グループ4(対照群)に比べ、グループ1と2においてNF-κBは活性化され(5~6倍)、TNF-αなどの炎症性サイトカインが有意に増加したのに対し(TNF-αのmRNAは約7倍の増加)、アルギニン投与(グループ3)によってこれらは有意に抑制されました(NF-κBは約80%の抑制。TNF-αのmRNAは約60%抑制)。このように、アルギニンのアルコール性肝障害改善作用は、アルギニンによる脂質過酸化とエンドトキシンの抑制と、それに続くNF-κBの活性化の抑制とTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生抑制によるものと考えられました。
 
【解説】
 
  アルコール常飲者は、アルコール性肝炎と診断されたとしても、なかなか禁酒することは難しいのが現状です。そのため、禁酒を実行している患者のみならず、飲酒を継続しているアルコール性肝炎の患者に対しても有効な薬剤が求められます。
 
  本実験モデルはそういう現状を考慮し、アルコール投与による肝炎を生成させた後、アルコールの投与を継続した状態でのアルギニンの効果を検討しました。その結果、アルコール性肝炎を惹起後、アルギニン投与時に同時にエタノールを投与し続けたにもかかわらず、アルギニンの投与によって脂肪肝、および肝細胞の壊死、炎症、線維化などの肝炎の病態が大幅に改善されました。これらの結果から、アルギニンは、有効な薬剤がほとんどないアルコール性肝炎の予防・改善薬として非常に有望であると考えられました。
 
  エンドトキシンと過酸化脂質のレベルはアルコール性肝炎において増加します。そしてこれらがアルコールによる肝毒性の主な原因と考えられています。本研究において、アルギニンは、アルコール投与によって増加したエンドトキシンと過酸化脂質のレベルを半分以下に減少させました。そして、アルギニンのこの効果が、アルギニンのアルコール性肝炎予防・改善作用の少なくとも一部分を説明していると考えられます。
 
  エンドトキシンと脂質過酸化がアルコール性肝障害を促進する経路は、NF-κBの活性化とそれに続く炎症性物質(TNF-αなど)の産生増加と考えられています。この炎症性物質がアルコール性肝炎を促進します。そのため、アルギニンによるNF-κBおよび炎症性物質(TNF-αなど)の抑制が、アルギニンによる肝の病態の改善に寄与しているものと考えられます。なお、アルギニンのこれらの働きは、アルギニンから生成したNOが関与しているものと考えられます。
 
  このように、アルギニンは、NOS(アルギニンからNOを生成する酵素)によってNOに変換され、NOの働きで、アルコールによって増加したエンドトキシンや脂質過酸化を抑制し、さらにNF-κBおよび炎症性物質(TNF-αなど)の活性化や増加を抑制するものと考えられます。アルギニン(NO)はこれらの働きでアルコール性肝炎を予防・改善するものと考えられます。
 
  アルギニンは、有効な薬剤がほとんどないアルコール性肝炎の予防・改善薬として非常に有望であると考えられます。


②Abu-Serieらは、アルギニンが非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を予防・改善することを示しました(Lipid in Health and Disease, 2015, 14: 128)
 
【目的】
  非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、脂肪肝が重症化した状態であり、肝炎の病態を示し(脂肪変性、炎症、肝細胞傷害など)、進行性で一部は肝硬変や肝がんに進行します。
 
  酸化ストレス(活性酸素が過剰に生成された状態)がNASHの病態に重要な役割を果たします。活性酸素はNASHの発症や進行を促進します。活性酸素は、肝細胞の壊死や炎症を引き起こすいくつかの炎症性サイトカイン(TNF-αなど)の生成を促進します。TNF-αは、NASHの病態に重要な役割を持っていると考えられています。
 
  アルギニンおよびそれから生成する一酸化窒素(NO)は、強力な抗酸化ストレス作用を有しています。そのため、アルギニンはNASHを予防・改善することが期待できます。
 
【方法および結果】
 
  NASHは脂肪を投与することで作成しました。ラット(SD rats、雄)を5群に分け、対照群(何も処理をしない正常群)、IL群〔イントラリピッド20%(大豆油20%含有)(8ml/kg/日)を3週間静脈内に投与〕、Arg群(アルギニンを2週間腹腔内に投与)、IL+Arg群(イントラリピッド20%を3週間静脈内に投与後、アルギニンを2週間腹腔内に投与)、Arg+IL群(アルギニンを2週間腹腔内に投与後、イントラリピッド20%を3週間静脈内に投与)としました。
 
  その結果、IL群では、対照群に比べ、脂質過酸化の程度(TBARS値で示されます)が血液と肝臓において2.8~3.7倍に増加しました。さらに、IL群では、対照群に比べ、肝臓のNO(一酸化窒素)レベルとeNOS(血管内皮型一酸化窒素合成酵素)活性が0.07~0.13倍に低下しました。また、体内抗酸化物質であるGSH(グルタチオン)の血液と肝臓における含量は、IL群では、対照群に比べ、約半分まで低下しました。体内抗酸化酵素であるGPx(グルタチオンペルオキシダーゼ)の血液と肝臓における活性およびSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)の血液における活性は、IL群では、対照群に比べ、0.64~0.89倍に低下しました。(上記のデータは何れも統計的に有意)。IL群では、酸化ストレスと関係があるTNF-α(炎症性物質)のレベルが、対照群に比べ、血液において3.3倍に、肝臓において8.5倍に増加しました。さらに、IL群では、対照群に比べ、ALTおよびASTの活性が有意に増加し、血中アルブミンが有意に減少し、尿素とクレアチニンレベルが有意に増加しました。これらの結果は、IL群では肝臓と腎臓が機能障害を引き起こしていることを示しています。
 
  一方、アルギニンを、イントラリピッド投与の前〔Arg+IL群(アルギニンの予防的投与群)〕、または後〔IL+Arg群(アルギニンの治療的投与群)〕に投与すると、血液と肝臓における脂質過酸化の程度は対照群レベルまで有意に改善されました。さらに、肝臓のNOレベルとeNOS活性は、対照群よりやや増加するか、対照群とほぼ同等レベルまで改善しました。また、体内の抗酸化レベルを示す、GSH、GPx、およびSODの血液と肝臓における含量や活性は、対照群より増加しました。TNF-αのレベルは、血液および肝臓において、ほぼ正常値まで改善しました。ALTおよびASTの活性、血中アルブミンレベル、尿素とクレアチニンレベルは、ほぼ正常レベルを示しました。これらの結果は、イントラリピッド投与による肝臓と腎臓の機能障害が、アルギニン投与によって、ほぼ正常まで予防または改善されたことを示しています。
 
  次に組織学的検査を行いました。その結果、イントラリピッド投与によって、肝細胞の細胞質に小さい脂肪空胞と、胆管の増殖が見られました。また、炎症細胞浸潤、壊死、微小血管の変化と共に脂肪肝が見られました。これは脂肪性肝炎の組織学的特徴を示しています。一方、アルギニン投与群(IL+Arg群、Arg+IL群)では、肝細胞は正常で、脂肪肝も胆管増殖もほとんど見られませんでした。
 
【解説】
 
  脂肪の投与は肝臓の脂肪含量を増加させ、肝細胞に脂肪滴として沈着させます。この脂肪肝は肝臓の異常の主な原因となり、障害、壊死、炎症などを引き起こしやすくなります。脂肪肝は、ミトコンドリアの機能障害を引き起こし、活性酸素の異常発生に重要な役割を果たします。活性酸素は、脂質過酸化、体内抗酸化物質(酵素)の枯渇、細胞膜の破壊、タンパク質の傷害などを引き起こします。この肝臓の酸化ストレスは、TNF-αによる肝臓の炎症と強く関連性があります。TNF-αレベルは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)において増加します。脂肪投与によって生じた高脂血症は、eNOS活性の低下とNO生成の減少をもたらします。生じた肝障害は胆管の増殖と関連性があります。また、高脂血症は酸化ストレスを高め、肝臓以外にも腎臓などに障害を引き起こします。
 
  本研究では、アルギニンを、イントラリピッド投与の前か後に投与した時、様々な有益な効果を示すことを明らかにしました。アルギニンは、脂質過酸化を正常レベルまで抑制し、GSHレベル、SODおよびGPxの活性、eNOS活性、NOレベルをほぼ正常化しました。また、TNF-αのレベルもほぼ正常化しました。アルギニンのこれらの効果は、アルギニンやそれから生じたNOによるものと考えられました(抗酸化作用など)。肝機能や腎機能を調べるためのALTおよびASTの活性、血中アルブミンレベル、尿素とクレアチニンレベルは、アルギニン投与によってほぼ正常化しました。これらの結果は、イントラリピッド投与による肝臓と腎臓の機能障害が、アルギニン投与によって、ほぼ正常まで予防または改善されたことを示しています。
 
  次に組織学的検査を行いました。その結果、イントラリピッド投与によって、肝細胞の細胞質に小さい脂肪空胞と、胆管の増殖が見られ、炎症細胞浸潤、壊死、微小血管の変化と共に脂肪肝が見られました。これは脂肪性肝炎(例えばNASH)の組織学的特徴を示しています。一方、アルギニン投与によって、これらの組織学的変化はほぼ正常化しました。
 
  このように、アルギニンは、効果的な薬がほとんどないNASHを正常化することができる、強力な予防・改善薬として非常に期待されます。
 
 
③Adawiらは、アルギニンが肝障害を改善することを示しました(Nutrition, 1996; 12: 529-533; Scand. J. Gastroenterol., 1997; 32: 835-840)
 
  ラット(SDラット)に、アルギニンを8日間経口投与したあと、8日目にD-ガラクトサミンを投与(腹腔内)して急性肝障害を引き起こしました。その結果、アルギニン投与群では、アルギニンを投与しない群に比べ、アルカリホスファターゼ、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(GOT)などの肝障害を示すマーカーは有意に減少しました。また、アルギニン投与によって、肝細胞の壊死や炎症細胞の浸潤は抑制されました。一方、アルギニンの代わりに一酸化窒素合成酵素阻害剤(L-NAME)(アルギニンからのNOの生成を抑制します)を投与すると肝障害の程度は悪化しました。これらのことから、アルギニンは肝障害を改善し、その作用は一酸化窒素(NO)によるものと考えられました。
 
 
 
                               (2020年1月14日記)

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