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【図の説明】
妊娠高血圧症候群のリスクがある状態(初産婦、本病の家族歴を有する妊婦、高齢妊婦、若年妊婦(20歳未満)、肥満妊婦、多胎妊婦、高血圧、糖尿病、腎臓病を有する妊婦、高血圧の家系の妊婦、前の妊娠で本病になった妊婦など)においては、何らかの原因で酸化ストレスが昂進し(活性酸素が異常に増加した状態)、活性酸素のスーパーオキシドが増加した状態になります。スーパーオキシドは血管(血管内皮細胞)において、アルギニンからNOSの働きで生成したNOと反応し、パーオキシナイトライト(活性酸素の一種)を生成します。パーオキシナイトライトはアルギナーゼを活性化させ、アルギニンを分解し、アルギニン不足の状態を作ります。NOSはアルギニン不足の状態ではNOの代わりにスーパーオキシドを生成します(NOSアンカップリング)。スーパーオキシドはNOと反応しパーオキシナイトライトとなります。パーオキシナイトライトはアルギナーゼをさらに活性化し、アルギニンはさらに不足していきます。この悪循環(活性酸素の増加、アルギナーゼの活性化、アルギニンの不足、NO生成減少)によって妊娠高血圧症候群が発症したり、病状が悪化したりすると考えられます。NO生成減少は血管を収縮させるため(NOは血管拡張物質であるためその不足は血管を収縮させます)血圧は上昇します。一方で増加した活性酸素は高血圧と共に臓器を障害し、脳出血、肝障害、腎障害などやけいれん発作などを引き起こすものと考えられます。
従って、この悪循環を断ち切って妊娠高血圧症候群の発症や進展を防ぐには、抗酸化剤で活性酸素を消去し、アルギナーゼ阻害剤でアルギナーゼを抑制し、アルギニン不足を補うためにアルギニンを補充することが現在最も望ましい改善法と考えられます。
①アルギニンは妊娠高血圧症候群を予防します
アルギニンは、効果的な方法がなかった、妊娠高血圧症候群(旧名:妊娠中毒症)の発病を明らかに防ぐことが示されました。妊娠高血圧症候群は、妊娠に伴う合併症の中で主要なもので、発病すると時に母体と胎児に重篤で危険な状態を引き起こしますので、その予防は大変重要なことでしたが、これまで効果的な方法がありませんでした。
F. Vadillo-Ortegaらは、妊娠高血圧症候群のハイリスクの妊婦(前の妊娠において妊娠高血圧症候群になった人や妊娠高血圧症候群の家族歴のある人など)にアルギニンを摂取させたところ、アルギニンを摂取したグループでは、アルギニンを摂取しないグループに比べ、明らかに(統計的に有意に)妊娠高血圧症候群の発病が低下することを明らかにしました(文献:Felipe Vadillo-Ortega, Otilia Perichart-Perera, Salvador Espino, Marco Antonio Avila-Vergara, Isabel Ibarra, Roberto Ahued, Myrna Godines, Samuel Parry, George Macones, Jerome F Strauss. Effect of supplementation during pregnancy with L-arginine and antioxidant vitamins in medical food on pre-eclampsia in high risk population: randomized controlled trial. BMJ 2011; 342: d2901)。
【試験の背景および目的】
①妊娠高血圧症候群(旧名:妊娠中毒症。英名:Pre-eclampsia)は妊娠に伴う合併症の中で主要なもので、発病すると時として母体や胎児の命にかかわることがある重大な病気ですが、これまで効果的な予防法はありませんでした。
②妊娠高血圧症候群は妊娠高血圧に蛋白尿が加わったものです。その要因として子宮胎盤の血管の異常により子宮胎盤血流が減少し、それを補おうとして母体の血管が収縮し血圧が上昇するのではないかと考えられています。
③妊娠高血圧症候群では血管内皮細胞の障害が考えられています。血管内皮細胞(血管の内壁を覆う一層の扁平な細胞)は血管拡張物質である一酸化窒素(NO)を生成し、血管の拡張を司っていますが、血管内皮細胞が障害を受けるとNOの生成が低下し、血管は収縮し易くなり、血流は減少します。実際、妊娠高血圧症候群ではNOの生成が低下していることが示されています。
④NOはアルギニンを原料として生成されますが、妊婦ではアルギニンが通常より多く消費され(胎児に酸素や栄養を十分供給するために血液循環を一定に保つ必要があり、そのためにNOが多く産生されなければなりません。また、胎児の成長のためにアルギニンが使われます)、常にアルギニン不足の状態にあります。その結果、妊婦の血管はNO不足により収縮し易くなります。
⑤妊娠高血圧症候群における血管内皮細胞を障害する原因の一つとして活性酸素が提案され、抗酸化剤が妊娠高血圧症候群を防ぐかどうか検討されましたが、現在その有効性は確定されていません。
以上の背景から、著者らは、妊娠高血圧症候群のハイリスク群を対象に、アルギニンの摂取が妊娠高血圧症候群の発病を防ぐことが出来るかを検討しました。また、抗酸化剤も同様に効果を示すかどうか検討しました。
【結果】
妊娠高血圧症候群のハイリスクの妊婦(妊娠14~32週)672人が試験に参加しました。ハイリスクの妊婦としては、妊娠高血圧症候群の家族歴があるものおよび以前の妊娠で妊娠高血圧症候群を発病したものとしました。672人を3グループに分け、222人をプラセボグループに、228人をアルギニン+抗酸化ビタミングループに、222人を抗酸化ビタミングループとしました。プラセボグループにはプラセボ食品を、アルギニン+抗酸化ビタミングループにはアルギニン3.3g+抗酸化ビタミン(ビタミンC250mg、ビタミンE200IUなど)を含む食品を、抗酸化ビタミングループには抗酸化ビタミン(ビタミンC250mg+ビタミンE200IUなど)を含む食品を1日2回摂取させました。アルギニン3.3g+抗酸化ビタミンを含む食品はプラセボ食品にアルギニン3.3g+抗酸化ビタミン(ビタミンC250mg+ビタミンE200IUなど)を添加したもので、抗酸化ビタミンを含む食品はプラセボ食品に抗酸化ビタミン(ビタミンC250mg+ビタミンE200IUなど)を添加したものでした。試験食品は分娩日まで摂取させました。試験は盲検法(Randomised blinded placebo controlled clinical trial)で行われました。
妊娠高血圧症候群の発病は、正常血圧の妊婦が妊娠20週以降に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上または/および拡張期血圧90mmHg以上)と蛋白尿(>300mg/24時間)が出現する場合としました。副作用はアルギニン+抗酸化ビタミングループの方がプラセボグループより多かったですが(その副作用は、はきけ、消化不良、めまい、動悸、頭痛)、試験を中止しなければならないような問題となる副作用は見られませんでした。
プラセボグループでは67人(30%)に妊娠高血圧症候群が発症しました。一方、アルギニン+抗酸化ビタミングループでは明らかに(統計的に有意に)発症数が低下し29人(13%)と半分以下でした。抗酸化ビタミングループでは発症数は50人(23%)と低下傾向が見られましたが統計的には有意ではありませんでした。試験食(アルギニン3.3g+抗酸化ビタミンを含む食品)の摂取時期と妊娠期間との関係を検討したところ、妊娠24週の前に摂取を始めた妊婦では妊娠高血圧症候群の発症が低下しましたが、24週の後の摂取の場合は効果は見られないようでした。
早産の数もプラセボグループに比べアルギニン+抗酸化ビタミングループでは明らかに(統計的に有意に)低下しました。プラセボグループでは早産の数は44人(20%)でしたが、アルギニン+抗酸化ビタミングループでは24人(11%)でした。抗酸化ビタミングループでは早産の数は52人(23%)でした。
アルギニンの血中濃度に関しては、試験前の測定値は、後に妊娠高血圧症候群を発症した妊婦では発症しなかった妊婦より低いことが明らかにされました。アルギニンの摂取によってアルギニンの血中濃度は上昇しました。アルギニンの血中濃度が高い妊婦では血圧はより低い傾向にありました。
このように、アルギニン+抗酸化ビタミンは、妊娠高血圧症候群のハイリスクの妊婦において、妊娠高血圧症候群の発症、および早産のリスクを明らかに低下させました。その効果は、妊娠24週の前に摂取を始めた妊婦では最も高いように思われました。一方、抗酸化ビタミンのみの摂取では改善傾向が見られただけでした。
【解説】
本文献の臨床試験は、「妊娠高血圧症候群の発病の大きな原因の一つはアルギニン不足によるものであり、その補充は本病の発病を防ぐ」との仮定の下に行われました。妊娠高血圧症候群では血管内皮細胞の障害が考えられています。血管内皮細胞は血管拡張物質である一酸化窒素(NO)を生成し、血管の拡張を司っていますが、血管内皮細胞が障害を受けるとNOの生成が低下し、血管は収縮し易くなります。実際、妊娠高血圧症候群ではNOの生成が低下していることが示されています。NOはアルギニンを原料として生成されますが、妊婦ではアルギニンが通常より多く消費され(胎児に酸素や栄養を十分供給するために血液循環を一定に保つ必要があり、そのためにNOが多く産生されなければなりません。また、胎児の成長のためにアルギニンは使われます)、常にアルギニン不足の状態にあります。その結果、妊婦の血管はNO不足により収縮し易くなります。血管内皮細胞を障害する原因の一つとして活性酸素が提案され、抗酸化剤が妊娠高血圧症候群を防ぐかどうか検討されたましたが、現在その有効性は見出されていません。そのため、その検証も行われました。
本臨床試験の結果は、アルギニン+抗酸化ビタミンは、妊娠高血圧症候群のハイリスクの妊婦において、妊娠高血圧症候群の発症、および早産のリスクを明らかに低下させました。その効果は、妊娠24週の前に摂取を始めた妊婦では最も高いように思われました。一方、抗酸化ビタミンのみの摂取は改善傾向を示しただけでした。
以上の結果から、アルギニン+抗酸化ビタミンは妊娠高血圧症候群の効果的な予防法になる可能性があります。
アルギニンや抗酸化ビタミンを妊娠時に摂取して大丈夫かどうかについては気になる点ですが、本文献では特に問題となる副作用は無かったと記しています。両成分は妊娠中も食事から毎日摂取していますので、恐らく問題とするならばその摂取量が適正かどうかということになると思います。妊娠時、特に妊娠高血圧症候群ではアルギニンの血中濃度※は低下しているとされています。そのため、アルギニンの適正摂取量は恐らく、妊婦のアルギニンの血中濃度を正常値までにする量と考えられます。本文献ではアルギニンの摂取量は、米国人の食べ物からのアルギニン1日摂取量を約5.4gとし、それとほぼ同量(1日6.6gのアルギニン)摂取することとしました。日本人の場合、同じ計算ですと、日本人の食べ物からの1日摂取量は約4gと考えられますので(『超アミノ酸健康革命-21世紀のサプリメント「アルギニン」のすべて』(古賀 弘著)を参照下さい)、それとほぼ同量の4g程度が妊娠高血圧症候群の予防効果を試す試験摂取量になるかも知れません。
※注釈:妊娠高血圧症候群のハイリスクの妊婦におけるアルギニンの血中濃度について
本文献によりますと、本試験に参加した妊娠高血圧症候群のハイリスクの妊婦におけるアルギニンの血中濃度は平均22~23μMでした。一方、一般の人におけるアルギニンの血中濃度は通常約100μMとされ(O. Eremin, L-Arginine: Biological aspects and clinical application, Chapman & Hall, New York, 1997など)ていますので、本試験の妊娠高血圧症候群のハイリスクの妊婦の場合、一般の人に比べアルギニンの血中濃度は4分の1程度の低濃度ということになり、それによってアルギニンを原料として生成するNOの量が低下することは容易に想像できますし、またそれによって血管は収縮し易くなり、高血圧が誘発される可能性も高くなることは容易に推察されます。しかしながら、アルギニンの摂取によって、アルギニンの血中濃度は平均30μM前後にまで上昇しましたが、正常値にまではまだ到達していないことから、このことがアルギニンの妊娠高血圧症候群予防効果がまだ十分でなかった原因の一つである可能性があります。アルギニンの摂取量を上げることで効果が上がるかどうか興味のあるところです。また、妊娠高血圧症候群の患者ではアルギナーゼ(アルギニンを分解します)が活性化されていることが明らかにされていますが(「2)妊娠高血圧症候群の発症メカニズムについての研究」を参照ください)、このアルギナーゼを抑制することでアルギニンの血中濃度が上がることが期待できます。
抗酸化ビタミンはそれ自体は妊娠高血圧症候群の予防にほとんど効果を示しませんでしたが、アルギニンと一緒に摂取することでその働きを助ける可能性があります。実際、抗酸化ビタミンはアルギニンの働きを増強することが示されています(アルギニンからのNOの生成を抗酸化ビタミンがさらに促進することと、活性酸素によって分解され易いNOの分解を抗酸化ビタミンが活性酸素を消去することで防いでいるためと考えられます)。このことから、アルギニン単独でも妊娠高血圧症候群の予防に効果が期待できますが、抗酸化ビタミンを併用することでさらに効果が高まる可能性があります。
これらのことから、本試験の結果と妊娠高血圧症候群の原因に関する研究結果(「2)妊娠高血圧症候群の発症メカニズムについての研究」を参照ください)を併せて考えますと、妊娠高血圧症候群の最も望ましい治療法は、アルギニン+抗酸化剤+アルギナーゼ阻害剤を組み合わせた治療法と考えられます。
②Sankaralingamらは、妊娠高血圧症候群の発症にアルギナーゼの活性化が関与している可能性を示しました(Cardiovascular Research, 85, 194 (2010))
【試験の背景および目的】
妊娠高血圧症候群は、血管の酸化ストレス(活性酸素が異常に増加している状態)を特徴とする高血圧症です。血管拡張物質であるNOの不足がこの病気の原因であることが提唱されています。妊娠高血圧症候群の患者では、アルギナーゼの活性化が起こることが示されています。しかしながら、アルギナーゼの活性化が妊娠高血圧症候群の発症や病状にどういう役割を持っているかは明らかではありません。アルギナーゼはアルギニンを分解します。そのため、アルギニン不足により、NOS(一酸化窒素合成酵素)はNOの代わりにスーパーオキシド(活性酸素の一種)を生成します(NOSアンカップリングと言います)。筆者らは、妊娠高血圧症候群の患者の血管でアルギナーゼが活性化され、それが血管内皮細胞の酸化ストレスに寄与していると仮定しました。
【結果】
妊娠高血圧症候群の患者の血管ではアルギナーゼ(アルギナーゼII)の発現量(13.25AU)が、正常な妊娠女性のアルギナーゼの発現量(0.007AU)に比べ、1900倍も増加していました。さらに、血管内皮細胞(HUVEC)を妊娠高血圧症候群の患者の血漿で処理すると、アルギナーゼ(アルギナーゼII)の発現と活性が増加しました(正常妊娠女性の血漿による処理に比べそれぞれ2.1倍と1.9倍)。また、同様に、妊娠高血圧症候群の患者の血漿で処理した血管内皮細胞では、スーパーオキシドの生成(34.2)が、正常妊娠女性の場合(5.7)の6倍に増加しました。さらにパーオキシナイトライトの生成も同程度に増加しました。
一方、血管内皮細胞をパーオキシナイトライトで処理すると、アルギナーゼ(アルギナーゼII)の発現と活性が約2倍に増加しました。このメカニズムを調べるために、NFκBを阻害すると、パーオキシナイトライトによって誘導されたアルギナーゼ(アルギナーゼII)の発現と活性はほぼ完全に抑制されました。この結果から、パーオキシナイトライトはNFκBを介してアルギナーゼ(アルギナーゼII)の発現と活性を増加するものと考えられました。
次に、アルギナーゼ阻害剤の影響を検討しました。血管内皮細胞を妊娠高血圧症候群の患者の血漿で処理すると、スーパーオキシドとパーオキシナイトライトが増加しますが、これをアルギナーゼ阻害剤で処理しますと、スーパーオキシドの生成が抑制されました(統計的に有意に)。一方、パーオキシナイトライトの生成量は増加しました(統計的に有意に)。アルギナーゼはアルギニンを分解しアルギニン不足をもたらしますが、アルギニンからNOを生成するNOSは、アルギニンが不足するとNOを生成せずにスーパーオキシドを生成するようになります(NOSアンカップリングと言います)。そのため、アルギナーゼを阻害するとアルギニンの分解が抑えられるため、アルギニンの量が増え、NOSはNOを生成し、スーパーオキシドの生成が抑制されます。一方、スーパーオキシドはNOSからだけでなく、他の経路(例えばNADPHオキシダーゼ)からも生成されますので、NOSからのNOの生成が増えることによって、このNOが他の経路で生成したスーパーオキシドと反応し、生成したパーオキシナイトライトの量が増えたものと考えられました。実際、アルギナーゼ阻害剤とNADPHオキシダーゼ阻害剤の両方で処理しますと、スーパーオキシドとパーオキシナイトライトの両方が強力に抑制されました。
では、血管内皮細胞を妊娠高血圧症候群の患者の血漿で処理する際にアルギニンを加えたらどうなるでしょうか。この場合は、アルギニンはアルギニン不足を補いますので、スーパーオキシドの生成は抑えられました。一方、パーオキシナイトライトの生成は増加しました。これは、アルギニンの添加によってNOの生成が増加したため、他の経路(例えばNADPHオキシダーゼ)によって生成したスーパーオキシドとNOが反応しパーオキシナイトライトの生成が増加したものと考えられました。次にアルギニンと共にアルギナーゼ阻害剤を加えてみました。そうしますとスーパーオキシドの生成は少し減少する傾向を示しましたが、パーオキシナイトライトの生成はさらに増加しました。このことは、アルギニンにアルギナーゼを加えることでさらにNOSの働きは改善され、NOの生成は増加しましたが、他の経路からのスーパーオキシドとそのNOが反応することでパーオキシナイトライトの生成が増加したものと考えられました。
【まとめ】
以上の結果から、妊娠高血圧症候群のリスクがある状態〔初産婦、本病の家族歴を有する妊婦、高齢妊婦、若年妊婦(20歳未満)、肥満妊婦、多胎妊婦、高血圧、糖尿病、腎臓病を有する妊婦、高血圧の家系の妊婦、前の妊娠で本病になった妊婦など〕においては、何らかの原因で酸化ストレスが昂進し(活性酸素が異常に増加した状態)、活性酸素のスーパーオキシドが増加した状態になります。スーパーオキシドは血管(血管内皮細胞)において、アルギニンからNOSの働きで生成したNOと反応し、パーオキシナイトライト(活性酸素の一種)を生成します。パーオキシナイトライトはアルギナーゼを活性化させ、アルギニンを分解し、アルギニン不足の状態を作ります。NOSはアルギニン不足の状態ではNOの代わりにスーパーオキシドを生成します(NOSアンカップリング)。スーパーオキシドはNOと反応しパーオキシナイトライトとなります。パーオキシナイトライトはアルギナーゼをさらに活性化し、アルギニンはさらに不足していきます。この悪循環(活性酸素の増加、アルギナーゼの活性化、アルギニンの不足、NO生成減少)によって妊娠高血圧症候群が発症したり、病状が悪化したりすると考えられます。NO生成減少は血管を収縮させるため(NOは血管拡張物質であるためその不足は血管を収縮させます)血圧は上昇します。一方で増加した活性酸素は高血圧と共に臓器を障害し、脳出血、肝障害、腎障害などやけいれん発作などを引き起こすものと考えられます。(「図.妊娠高血圧症候群の発症のメカニズム」を参照ください)。
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