アルギニンは、免疫力を強力に高め、細菌やウィルスによる感染症を防御します!

まとめ

①細菌感染症に対するアルギニンの効果

  • アルギニンは、敗血症において、免疫系の調節不全(T細胞の減少、T細胞サブセットのバランスの異常)を改善し、サイトカインストーム(炎症性サイトカインの著増)を抑制し、臓器障害を改善しました。
  • 活動性結核患者において、アルギニンは、体重増加、喀痰中結核菌の消失速度、咳などの症状を有意に改善しました。
  • アルギニンは、重症(致死性)の腹膜炎における生存率を高めました。これはアルギニンのT細胞活性化と免疫力増強作用によると考えられました。
  • アルギニンやアルギニン混合物は、重症の火傷を負った動物および人において、死亡率を低下させ、臨床検査値、感染症罹患率、入院期間などを改善しました。
  • アルギニン(一酸化窒素)はクラミジア慢性感染症による卵管水腫を抑制し、それによって引き起こされる不妊を防ぐことが期待されました。
  • 消化器がんの手術をした患者にアルギニン(RNAとω3脂肪酸と一緒に)を摂取させ、アルギニンを摂取しない患者と比較しました。アルギニンを摂取したグループは明らかに感染症が減少し、入院期間も短縮しました。
  • 外傷、手術、または敗血症でICUに入院している患者にアルギニン(およびヌクレオチド、魚油)を摂取させ、アルギニンを摂取しない患者と比較しました。アルギニンを摂取したグループでは感染症が有意に減少し、入院期間も有意に短縮しました。

 

②ウィルス感染症に対するアルギニンの効果

  • 中等症II~重症の新型コロナウィルス感染症の患者において、アルギニンは経口摂取によって、プラセボにくらべ、呼吸補助のレベルを有意に改善しました。本患者において、アルギニンは、プラセボにくらべ、入院期間をほぼ半減しました。本患者において、アルギニンはプラセボに比べ死亡率を低下させました。

  • 気道感染〔風邪ウィルス(風邪ウィルスのうち10~15%(流行期35%)はコロナウイルスを原因とします)、インフルエンザウィルスなどによる〕を繰り返す子供(2~13歳)を2グループに分け、一方にアルギニンを、他方にプラセボを60日間摂取させ効果を比較しました。アルギニンは気道感染を有意に防ぎました。アルギニンは免疫系を強化し気道感染症を防御しました。
  • アルギニンは、ヘルペスウィルスの増殖を抑制し、動物モデルにおいてヘルペスウィルス感染症を抑制しました
 
 
③アルギニンの創傷治癒効果
  • アルギニンは、人において、傷におけるコラーゲンの合成と沈着を有意に促進し、傷の改善が期待されました
  • アルギニンは従来の薬では治癒できない裂肛(切れ痔)に対して、副作用の問題なくこれを治すことができました

 

●このように、アルギニンは、免疫力を強力に高めることで、細菌感染症、ウィルス感染症、性感染症などほとんどの感染症に防御効果を持つことが期待されますので、これら感染症が心配な方や感染症でお悩みの方にアルギニンをおすすめします。また、アルギニンは傷の治りを早めたり、痔を治します。。アルギニンはアミノ酸で体に必須の体内成分ですので副作用の心配はほとんどないと考えられます。

図.細菌やウィルスによる感染症を防御する免疫機構と、免疫に対するアルギニンの働き

【図の説明】

  「細菌やウィルスによる感染症を防御する免疫機構」については「1)私たちを感染症の恐怖から守る免疫とは」を、「免疫に対するアルギニンの働き」については「2)アルギニンの免疫増強作用」をご参照下さい(図は主に「医療情報科学研究所編、「病気が見える vol. 6 免疫・膠原病・感染症 第2版」(メディックメディア、2019)」より引用しました)。

 

 

図2.アルギニンによって期待される新型コロナウィルス感染症の予防、改善効果

 

 

【図の説明】

  アルギニンは、NK細胞の増殖・活性化、B細胞を増やし抗体産生を促進、T細胞の増殖・活性化、CTL(細胞傷害性T細胞)の活性化、IL-2、 IFNγ (抗ウィルス活性を示す)などの生成促進などの作用を有し、自然免疫と獲得免疫の両方を増強しますので、アルギニンは新型コロナウィルスによる感染を防ぐことが期待できます。

  新型コロナウィルス感染症では、アルギニンを分解するアルギナーゼ活性が高まり、アルギニンが減少、枯渇しますので、それによって血管内皮細胞障害が生じ、全身の血管病(微小血管障害、血栓形成など)を引き起こし、血管炎や血栓症、脳梗塞、心筋障害などを生じると考えられています。また、アルギニンの減少、枯渇はT細胞の減少、機能不全を引き起こし、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNFーαなど)を増加させサイトカインストームを生じ、急性呼吸促迫症候群(ARDS)などを引き起こすものと考えられます。これらが本感染症の重症化を引き起こし、ついには死に至るものと考えられます。アルギニンは、アルギニンの体内濃度を高め、血管内皮細胞障害を改善し、T細胞を増殖、活性化しますので本感染症における重症化や死亡に対しそれを防いだり改善することが期待できます。実際、アルギニンは、本感染症の中等症IIから重症の患者において、呼吸機能を改善し、入院期間をほぼ半減し、死亡率を低下させました。

 

1.アルギニンは、免疫力を強力に高め、ウィルスや細菌による感染症を防ぎます!
 
1)私たちを感染症の恐怖から守る免疫とは(上図を参照ください)
 
  今、世界は感染症の恐怖に恐れおののいています。エボラ出血熱、西ナイル熱、炭疽病、O-157(腸管出血性大腸菌)感染症、インフルエンザ、エイズ、ウィルス性肝炎、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MRSA感染症、新型コロナウィルス感染症のように重症化し死亡率の高いものから、風邪、歯周病、性感染症(淋病、性器クラミジア感染症など)や女性に多い膀胱炎などのように死にはしないが不快感や苦しみを与え生活に支障をきたすものまでさまざまです。中でも性感染症(エイズを含む)は、主に性行為によって感染しますが、自覚症状が無いことが多いため放置されることが多く、フリーセックス、性行為の多様化(オーラルセックスなど)、新しい性風俗の出現などと共に今特に若者の間に爆発的に広まっています。また、性感染症は最近の若い夫婦に増えている不妊症の大きな原因ともなっています。
 
  しかし、これらの感染症の原因である細菌やウィルスに触れたとしても、皆が感染症に罹るわけではありません。それはどうしてでしょうか?その差は免疫力にあります。細菌やウィルスの攻撃に対しては私たちの体は常に免疫力で対抗し、免疫力がしっかりしていれば通常は細菌やウィルスは撃退され感染症になることはありませんし、例え罹ったとしても軽くて済みます。ところが、何らかの原因(ストレス、喫煙、運動不足、睡眠不足、バランスの悪い食事、大量のアルコールの摂取、過労、寒冷など)で免疫力が弱っているところで細菌やウィルスに接触しますと、弱っている免疫力ではこれらの細菌やウィルスを撃退することができず感染症に罹ることになります。そのため、感染症に罹るのを避けるためには自分の免疫力を常に高めておく必要があります。しかし、現代人の生活そのものが免疫力を弱める方向にあり、感染症(やがん)にも罹りやすくなっています。
 
  では、免疫はどのようにして細菌やウィルスによる感染症を撃退するのでしょうか。免疫機構には、自然免疫と獲得免疫があり、これらの連携によって行われます。自然免疫とは、私たちの体が生まれながらにして持っている免疫の働きで、自分以外(非自己、異物)を大まかに認識して働く免疫反応であり、免疫機構の一次防御としての役割を果たしています。一方、獲得免疫とは、感染などによって生後新たに獲得される、より精密で強力な免疫反応です。獲得免疫は自然免疫に続いて起こりますが、自然免疫が作用の発現が速い(即時的)のに対し、作用の発現には数日を要します。この両者がお互いに協調・活性化し合うことで免疫反応は成り立っています。
 
  病原体侵入の際は、先ず自然免疫がその防御に働きますが、対処しきれないときは獲得免疫が誘導されます。自然免疫では、食細胞などが、微生物特有の分子パターンなどを認識することで大まかに病原体を察知し、排除に当たります。一方、獲得免疫では、ある特定の異物に反応するリンパ球だけが増殖し、これに対処します。また、一度認識した異物を記憶することで(免疫記憶)、次回以降の感染ではより強く、より早い応答を行うことが可能です。一般的にいわれる「免疫がつく」とは、この獲得免疫の特徴を指します。
 
  細菌(主に化膿菌)が体に侵入しようとすると、皮膚や粘膜およびそれらの分泌物質などがバリアとなり、感染防御の第一段階として働きます。体表面のバリアとしては、皮膚や粘膜による異物の侵入阻止、粘膜表面の粘液や分泌液による異物の洗い流し、涙や唾液などの分泌液・胃液・消化酵素などによる殺菌、皮膚や粘膜に存在する常在細菌叢による外来微生物の定着阻止、気道の線毛運動・咳・くしゃみなどによる異物の排除、などがあります。バリアを突破した細菌に対しては、好中球やマクロファージなどの食細胞が、直接的に細菌を貪食します。細菌が体組織内に侵入しますと、感染巣でマクロファージなどが産生するサイトカインによって、好中球は血管外へ遊出し、走化因子(ケモカイン)によって感染巣へ導かれ、貪食を開始します。一方、補体は、食細胞の炎症巣への動員(走化)などで、直接的・間接的に細菌排除に働きます。以上が細菌感染における自然免疫です。
 
  ウィルスの場合は、バリアを突破したウィルスは細胞に感染し、自己複製によって増殖します。このため、ウィルスの排除には感染細胞をまるごと破壊する必要があります。NK細胞は、非特異的な認識により感染細胞を破壊し、ウィルスの排除を行います。また、樹状細胞などはインターフェロン(IFN-α、β)を産生し、他の細胞の抗ウィルス活性を増強します。以上がウィルス感染における自然免疫です。
 
  病原体に対し、自然免疫のみで対処しきれないとき、抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ、B細胞)によるT細胞への抗原提示と、それに続く獲得免疫による防御が行われます(抗原とは、非自己と判断され、抗体産生などの免疫反応を引き起こすものをいいます。異物が細菌やウィルスの場合、 その構成成分などが抗原となります。また、このような抗原を提示する能力の高い細胞を抗原提示細胞といいます)。ナイーブT細胞(まだ一度も抗原提示を受けていないT細胞)の場合、ここでエフェクターT細胞に分化します。エフェクターT細胞には、ヘルパーT細胞〔Th1、Th2、Th17、Tfh(濾胞性ヘルパーT細胞)など〕、細胞傷害性T細胞(CTL)、制御性T細胞(Treg)などがあります。ヘルパーT細胞は、抗原提示に反応し種々のサイトカインを産生し、そのサイトカインの種類によってほかの免疫細胞の働きを調節しています。つまりT細胞は獲得免疫の中心的役割を担っており、特にヘルパーT細胞は免疫を調節する司令官のような存在で、免疫細胞の中でも最も重要な細胞といえます。Th1細胞は、IL-2(T細胞、NK細胞の増殖・活性化、CTLへの分化誘導などの作用を示す)やIFN-γ(抗ウィルス活性を示したり、マクロファージやNK細胞の活性化、樹状細胞の抗原提示能の増強などの働きを示す)を分泌し、細胞性免疫を増強します。一方、Th2細胞は、IL-4〔抗原特異的なナイーブB細胞の活性化とクラススイッチを促します(IgGの産生促進)〕などを分泌し、液性免疫を促進します。Th17細胞は、IL-17およびIL-22を分泌し、上皮細胞からの抗菌ペプチド産生を促したり、好中球を活性化することで粘膜面の感染防御に働きます。Tfh細胞は、IL-21を産生し、B細胞の増殖・活性化およびIgGの産生促進(クラススイッチ)に重要な役割を果たし、液性免疫に中心的な役割を果たしています。細胞傷害性T細胞(CTL)は、キラーT細胞とも呼ばれ、ウィルス感染細胞を特異的に傷害します。ウィルス感染初期の防御はNK細胞が中心となりますが(自然免疫)、その数日後にはCTLによる特異的な防御が行われます(獲得免疫)。Treg細胞は、T細胞、マクロファージ、樹状細胞の機能を抑制し、過剰な免疫反応や自己免疫疾患の発症を抑制しますが、一方でその過剰な活性化は免疫低下や易感染性を引き起こします。このようにTregによる免疫制御は、免疫寛容の成立や免疫恒常性の維持において重要な役割を担っています。すなわち、これらT細胞群におけるバランスが正常な免疫反応を維持したり発揮するのに大変重要です。獲得免疫には液性免疫と細胞性免疫があります。細菌(主に化膿菌)は主に液性免疫によって、ウィルスは主に細胞性免疫によって対処されます。
 
  液性免疫とは、抗体が中心となって働く免疫反応のことです。抗体の産生は次のように行われます。末梢組織(細菌の感染部位)で抗原を取り込んだB細胞はリンパ節に移動し、ヘルパーT細胞に抗原提示をします。抗原提示をされたヘルパーT細胞(Tfh)はサイトカイン(IL-21)を産生し、B細胞を活性化・増殖し、形質細胞へ分化させ、大量の抗体を産生させます。B細胞は最初(感染初期)はIgMを産生しますが、ヘルパーT細胞(Tfh細胞など)が産生するサイトカインなどの刺激によって細菌防御の効果がより高いIgGを産生するようになります(これを抗体のクラススイッチといいます)。抗体の主な働きとしては、細菌の表面抗原に結合して好中球などの食細胞が食べやすいようにするオプソニン化(このように貪食を助ける物質をオプソニンといい、その作用をオプソニン化といいます)、細菌などが生成する毒素やウィルスに結合して毒性や感染力を失わせたりする中和、補体の活性化などがあります。補体は細菌の侵入を契機に活性化されますが、炎症の促進や病原体の排除など生体防御に重要な作用を発揮します。獲得免疫においては、補体成分(C3b)は抗体と同様に食細胞の貪食を助けるオプソニン化の働きを持ちます。補体成分(C3b)は抗体と共に細菌(抗原)に結合し、食細胞の貪食能を高めます(このように補体は抗体と共に働く作用を持つことから、抗体を補うものとして補体と名付けられました)。補体にはこのほか、MAC(膜傷害複合体)形成による溶菌(免疫溶菌)、血管拡張・血管透過性亢進、食細胞の炎症巣への動員(走化因子)などの働きがあります。このように、抗体、補体、食細胞の協働により細菌が排除されます。
 
  細胞性免疫とは、細胞成分が中心となる免疫反応で、Th1細胞を中心に、細胞傷害性T細胞(CTL)などの免疫細胞によって行われる抗原特異的な免疫反応をいいます。ウィルス感染においては、感染部位で抗原(ウィルスやネクローシスした感染細胞など)を取り込んだ樹状細胞は、リンパ節などに移動し、抗原提示をすることで(ナイーブ)CD8陽性T細胞を活性化し〔Th1細胞の補助(IL-2)により活性化・増殖〕、CTLに分化誘導されます。その後感染部位に移動したCTLは、ウィルス感染細胞に提示された抗原を特異的に認識し、感染細胞を破壊します。
 
  細菌やウィルス感染において活性化されたT細胞やB細胞の一部はメモリー細胞として長期間体内に残り、次回の病原体侵入に備えます。そのため、次回の侵入時には作用の発現が速くなります(これを免疫記憶といいます)。感染が終了した後(同じ抗原による曝露が無くなった後)、エフェクターT細胞は1~2週間後には90%の細胞が死滅し、残りの10%がメモリーT細胞に分化します。メモリーT細胞には、セントラルメモリーT細胞(Tcm)とエフェクターメモリーT細胞(Tem)があります。Tcmは主に二次リンパ組織に存在しています。再度同一の抗原に曝露された場合にはIL-2(T細胞・NK細胞の増殖・活性化、CTLへの分化・誘導作用)を産生して速やかに増殖し、一部はTemへと分化していきます。一方で、Temは主に炎症の局所(例えば肺、肝臓、腸管など)に存在しており、同一抗原刺激によりサイトカイン(IL-4、IFN₋γ、IL-5など)(IgG産生促進、マクロファージ・NK細胞の活性化、樹状細胞の抗原提示能の増強、抗ウィルス活性作用など)を大量に産生します。このように二種類のメモリーT細胞が長期間にわたり生存することで、同一の病原体が再度侵入してきた場合に速やかな免疫応答を発動することが可能となります。
  
  なお、病原体が排除された後は、Tregの働きでT細胞、マクロファージ、樹状細胞の機能が抑制され、免疫反応が抑制されます。
 
【参考文献】
(1)医療情報科学研究所編、「病気が見える vol. 6 免疫・膠原病・感染症 第2版」(メディックメディア、2019)など。
2)アルギニンの免疫増強作用(上図を参照ください)
 
  アルギニンは、細菌やウィルスによる感染において、自然免疫と獲得免疫の両方を増強して感染症を防ぐことが期待できます。
 
  アルギニンは、マクロファージを活性化し、その食作用や殺細胞作用を増強します。アルギニンは、人において、刺激によるB細胞の反応性を有意に増強しました文献1
 
  アルギニンは、正常人において、循環血中のNK細胞数を32%増加しました。また、NK細胞活性を91%増強しました(文献1)。ウィルス感染初期においては、NK細胞が中心となって防御を行います。NK細胞は、ウィルスに感染した細胞を非自己と認識し破壊します。そのため、ウィルス感染を初期の段階で抑制するためにはNK細胞の働きが重要です。アルギニンはNK細胞の活性を高めてウィルス感染を早期に抑制することが期待できます。
 
  アルギニンは、T細胞の増殖や働きに必須の成分です。そのため、アルギニンの不足はT細胞の機能障害を引き起し、感染症やがんなどに対する抵抗性が低下します。アルギニン不足は、がん、手術後、外傷、感染症など多くの疾患などで見られ、これらの疾患などにおいてT細胞の増殖抑制や機能障害がみられます(文献2)。アルギニンはT細胞の増殖抑制や機能障害を改善し、感染症やがんに対する抵抗性を高めます。さらにアルギニンは、活性化されたT細胞の生存能力を高めます。また、アルギニンは、CTLの生存能力と細胞傷害性を増加します。アルギニンは、高い生存能力を有するセントラルメモリー様T細胞の生成を促進します(文献3)。
 
  アルギニンとn-3系必須脂肪酸およびリボ核酸の混合物は、人において、B細胞の量を増加させ、IgGとIgMの血中濃度を高めました。また、同混合物は、Tリンパ球とヘルパーT細胞の数を有意に増加させました(文献1)。
 
  これらのことから、アルギニンやその混合物は、細菌やウィルスによる感染において、自然免疫と獲得免疫の両方を増強して感染症を防ぐことが期待できます。
 
  アルギニンは、人において、IL-1αの血漿中濃度を有意に増加させました(IL-1は、マクロファージなどによって産生され、リンパ球や好中球などの免疫系細胞の活性化・増殖促進などに関与します)。アルギニンは、人において、IL-2の生成を促進しました(IL-2は、主にTh1細胞から産生され、T細胞・NK細胞の増殖・活性化、CTLへの分化誘導などに関与します)。アルギニンあるいはアルギニンとn-3系必須脂肪酸およびリボ核酸の混合物は、人などにおいて、IFNγの生成を有意に促進しました(IFNγは、代表的なTh1型サイトカインで細胞性免疫反応の要です。その働きは、マクロファージ・NK細胞の活性化、樹状細胞の抗原提示能の増強などに関与し、抗ウィルス活性を示します)。このように、アルギニンやその混合物は、免疫系に関与するサイトカインの産生促進によっても免疫系の増強を促進します文献1
 
  一方、敗血症(大量の細菌やウィルスによる感染症などが原因)などの重度の感染症においては、免疫系の調節不全(T細胞サブセットのバランスの異常など)によって炎症性サイトカインの急激な増加(サイトカインストーム)が起こり、それによって炎症反応が急速に進行し、不可逆的な多臓器不全を生じさせます。アルギニンは、敗血症モデルにおいて、免疫系の調節不全を改善し、炎症性サイトカインの著増を抑制し(サイトカインストームの抑制)、抗炎症性サイトカインを増加させ、臓器障害を軽減しますので、敗血症における臓器障害に対し、標準治療(抗菌剤など)の補助療法として効果が期待できます(文献4)。コロナウィルスの場合にも、その重症化の原因は、大量のウィルスによる免疫系の調節不全とそれによる炎症性サイトカインの著増(サイトカインストーム)と考えられています(文献5)。
 
  従って、アルギニンは、コロナウィルスに対し、その免疫力増強作用による感染防御効果と、サイトカインストーム抑制作用による重症化抑制効果の両作用が期待できます
 
  このように、アルギニンやその混合物は、自然免疫や獲得免疫の働きを高めました。すなわち、マクロファージの活性を高め、NK細胞の活性を増強し、T細胞の増殖や活性を高めB細胞の量や活性を高めIgGとIgMの血中濃度を高めCTLの生存能力と細胞傷害性を増加し、セントラルメモリー様T細胞の生成を促進します。また、IL-1α、IL-2、IFNγなどのサイトカインの生成を促進し免疫系を活性化します。そのため、アルギニンは細菌やウィルスによる感染症を防ぐことが期待できます。また、アルギニンは、敗血症などの重傷感染症において、免疫系の調節不全の改善、サイトカインストームの抑制、臓器障害の抑制などの作用を有しますので、細菌やウィルス感染症における重症化を抑制することが期待できます。
 
 
【文献】
(1)O. Eremin, ed. L-Arginine: Biological aspects and clinical application. Chapman & Hall 1997: 27-77.
(2)Arginine and Immunity. J. Nutr., 2007; 137: 1681S-1686S.
(3)L-Arginine Modulates T Cell Metabolism and Enhances Survival and Anti-tumor Activity. Cell., 2016; 167: 829-842.
(4)Intravenous Arginine Administration Benefits CD4 + T-Cell Homeostasis and Attenuates Liver Inflammation in Mice With Polymicrobial Sepsis. Nutrients., 2020; 12: E1047.
(5)新型コロナウィルス感染症(COVID-19)とサイトカインストームー炎症病態からみた治療法の選択.『医学の歩み』273巻8号(2020年5月23日発行)など。
 
2.アルギニンの感染防御効果および創傷治癒効果のデータ(欧米の一流医学学術誌に掲載)
 
 
①細菌感染症に対するアルギニンの効果
 
●アルギニンは、敗血症のマウスにおいて、低下したアルギニン濃度を高め、免疫系の調節不全(T細胞の減少、T細胞サブセットのバランスの異常)を改善し、サイトカインストーム(炎症性サイトカインの著増)を抑制し、臓器障害を改善しました。アルギニンの作用はNOを介するものと考えられました(文献1)。
 
●活動性結核患者において、アルギニンは、プラセボ群に比べ、体重増加、喀痰中結核菌の消失速度、咳などの症状を有意に改善しました。アルギニン投与群では、血漿中アルギニン濃度は有意に増加しました。このように、アルギニンは活動性結核患者において、化学療法剤のアジュバントとして有用であることが示されました。アルギニンのこの効果はNOを介すると考えられました(文献2)。
 
●アルギニンの摂取によって、重症(致死性)の腹膜炎を起こしたラット(ネズミ)の生存期間が有意に増加しました。これはアルギニンのT細胞活性化と免疫力増強作用によると考えられました(文献3)。
 

●アルギニンやアルギニン混合物は、重症の火傷を負った動物および人において、死亡率を低下させ、臨床検査値、感染症罹患率、入院期間などを改善しました(文献4)。

●アルギニン(一酸化窒素)はクラミジア慢性感染症による卵管水腫を抑制し、それによって引き起こされる不妊を防ぐことが期待されました(マウス)(文献5)。
 
●消化器がんの手術をした患者にアルギニン(RNAとω3脂肪酸と一緒に)を摂取させ、アルギニンを摂取しない患者と比較しました。アルギニンを摂取したグループは明らかに感染症が減少し、入院期間も短縮しました(文献6)。

●外傷、手術、または敗血症でICUに入院している患者にアルギニン(およびヌクレオチド、魚油)を摂取させ、アルギニン
(およびヌクレオチド、魚油)を摂取しない患者と比較しました。アルギニン(およびヌクレオチド、魚油)を摂取したグループでは感染症が有意に減少し、入院期間も有意に減少しました(文献7)。
 
 
②ウィルス感染症に対するアルギニンの効果
 
●中等症II~重症の新型コロナウィルス感染症の患者において、アルギニンは経口摂取によって、プラセボにくらべ、呼吸補助のレベルを有意に改善しました。本患者において、アルギニンは、プラセボにくらべ、入院期間をほぼ半減しました。本患者において、アルギニンはプラセボに比べ死亡率を低下させました(文献12)。

 

●気道感染〔風邪ウィルス(風邪ウィルスのうち10~15%(流行期35%)はコロナウイルスを原因とします)、インフルエンザウィルスなどによる〕を繰り返す子供(2~13歳)を2グループに分け、一方にアルギニンを、他方にプラセボを60日間摂取させ効果を比較しました。アルギニンは気道感染を有意に防ぎました。アルギニンは免疫系を強化し気道感染症を防御しました(文献8)。
 
●アルギニンは、ヘルペスウィルスの増殖を抑制し、動物モデルにおいてヘルペスウィルス感染症を抑制しました(文献9)。

 
③アルギニンの創傷治癒効果
 
●アルギニンは、人において、傷におけるコラーゲンの合成と沈着を有意に促進し、傷の改善が期待されました(文献10)。
 
●アルギニンは従来の薬では治癒できない裂肛(切れ痔)に対して、副作用の問題なくこれを治すことができました(文献11)。


【まとめ】
 
  このように、アルギニンは、免疫系を強化することによって、細菌感染症(敗血症、活動性結核、腹膜炎、火傷後の感染症、がん手術後感染症、ICUにおける感染症など)、ウィルス感染症〔新型コロナウィルス、風邪(風邪ウィルスのうち10~15%(流行期35%)はコロナウイルスを原因とします)、インフルエンザ、ヘルペスなど〕、性感染症(クラミジアなど)などほとんどの感染症に防御効果を持つことが期待されます。また、傷の治りも早めます。

 
●現在、アルギニンサプリメントを常用している方からは、風邪を引かなくなった、歯周病が改善した、おでき(黄色ぶどう球菌による感染症)ができにくくなった、傷の治りが早くなったなどのアルギニンの感染症防御効果、創傷治癒促進効果が報告されています。
  私(古賀)も、以前は年に数回以上は(季節にかかわらず)風邪で熱を出し寝込んでいましたが、アルギニンを飲み始めてからは(もう20年以上も飲んでいます)ほとんど風邪を引かなくなり風邪で寝込んだことは1回もありません。また、歯周病による歯ぐきからの出血や膿、痔による出血と痛みに悩んでいましたがそれも治りました。


●アルギニンサプリメントをおすすめしたい方

・感染症にかかるのが怖い方、感染症でお悩みの方
・性感染症(クラミジア感染症など)にかかるのが怖い方、性感染症でお悩みの方
・新型コロナウィルス感染症が怖い方
・風邪をひきやすい方、風邪ひき体質を治したい方
・歯周病でお悩みの方
・痔でお悩みの方
・傷の治りを早めたい方(術後、けが、火傷など)
・傷の治りが遅い方(糖尿病性潰瘍、床ずれなど)など

●アルギニンを摂取する場合の注意点
  これについては『アルギニンサプリメントの正しい選び方』をご覧ください。


 
3.アルギニンが免疫系を改善(増強)し、細菌やウィルス感染症を予防・改善する文献
 
(1)アルギニンは、敗血症のマウスにおいて、低下したアルギニン濃度を高め、免疫系の調節不全(T細胞の減少、T細胞サブセットのバランスの異常)を改善し、サイトカインストーム(炎症性サイトカインの著増)を抑制し、臓器障害を改善しました。アルギニンの作用はNOを介するものと考えられました(Yehら,Nutrients, 2020; 12: E1047.)
 
  敗血症は、感染に対する宿主免疫反応の調節不全によって引き起こされる多臓器不全を伴う生命を脅かす症候群として定義されます。敗血症における重度の感染は自然免疫や獲得免疫を活性化し、炎症性物質の生成を増加させます。一方、これを抑制するために抗炎症性物質が産生されます。しかしながら、これら二つの反応のアンバランスが炎症反応の調節不全と不可逆的な多臓器障害を生じさせます。従って、これらの反応を正常化することによって全身の免疫反応のバランスを整え、合併症や臓器障害を抑制すると考えられます。敗血症においてはアルギニン不足の状態にあります。アルギニンは、T細胞の増殖や働きに必須の成分です。そのため、アルギニンの不足はT細胞の機能障害を引き起します。アルギニンは動物において敗血症における生存率を改善します。本研究では、敗血症においてアルギニンがCD4陽性T細胞の調節機構にどう影響するかを検討しました。また、敗血症のおける臓器障害の例として、肝臓に対するアルギニンの影響が検討されました。さらに、アルギニンの作用にNOがどう関わっているかも検討しました。
 
  敗血症を起こしたマウスにおいて、血漿中アルギニン濃度は正常群に比較して3分の1程度に有意に低下していました。敗血症群の血中およびリンパ節のCD4陽性T細胞量(%)は、正常群に比較して有意に減少しました。また、敗血症群において、正常群に比較して、血中およびリンパ節のTh2細胞およびTh17細胞量(%)の増加、Th1/Th2比の低下傾向、Th17/Treg比の増加などが見られました。さらに、肝臓においては、炎症性サイトカイン(mRNA)(IL-1β、IL-6、TNF-α)および肝機能検査値(AST、ALT)やMDA(脂質過酸化の主要なマーカー)の顕著な増加が見られました。一方、アルギニンの投与(静脈内)によって、血漿中アルギニン濃度は正常群と同等レベルまで増加しました。また、血中およびリンパ節のCD4陽性T細胞量(%)は正常群と同等レベルまで増加しました。CD4陽性T細胞のサブセットに関しましては、敗血症群と比較して、血中およびリンパ節のTh1細胞およびTreg細胞量(%)の有意な増加、Th1/Th2比の有意な増加、Th2細胞およびTh17細胞量(%)の有意な減少、Th17/Treg比の有意な減少などが見られました。さらに、肝臓においては、敗血症群と比較して、炎症性サイトカイン(mRNA)(IL-1β、IL-6、TNF-α)および肝機能検査値(AST、ALT)やMDA(脂質過酸化の主要なマーカー)の顕著な減少が見られました。これらのアルギニンの作用は、NOの生成を阻害すると見られなくなるので、NOを介すると考えられました。
 
  なお、Yehらは前報において(Nutrients, 2017; 9: 507)、マウス敗血症モデルにおけるアルギニン投与(静脈内)の効果を検討しました。その結果、アルギニンは、敗血症モデルの肺において顕著に増加した炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-α)レベルを有意に抑制しました。一方、抗炎症性サイトカイン(IL-10、TGF-β1)レベルは有意に増加させました。また、肺の組織学的検査において、敗血症モデルに見られた、中隔スペースの肥厚、肺胞構造の破壊、好中球浸潤、浮腫、充血、うっ血、肺胞内出血、点在した肺実質片などの炎症性障害は、アルギニンの投与によって顕著に軽減していました。
 
  このように、アルギニンは、敗血症モデルにおいて、免疫系の調節不全を改善し、炎症性サイトカインを抑制し、抗炎症性サイトカインを増加させ、臓器障害を軽減しますので、敗血症における臓器障害に対し、標準治療(抗菌剤など)の補助療法として効果が期待できます。
 
  コロナウィルスの場合にも、その重症化の原因は、大量のウィルスによる免疫系の調節不全とそれによる炎症性サイトカインの著増(サイトカインストーム)と考えられています〔新型コロナウィルス感染症(COVID-19)とサイトカインストームー炎症病態からみた治療法の選択.『医学の歩み』273巻8号(2020年5月23日発行)など〕従って、アルギニンは、コロナウィルスに対し、その免疫力増強作用による感染防御効果と、サイトカインストーム抑制作用による重症化抑制効果の両作用が期待できます。
 
 
(2)アルギニンは、化学療法剤のアジュバントとして、活動性結核患者の臨床アウトカムを改善します(Eur Respir J., 2003; 21:483-488.)
 
  二重盲検比較試験において、塗抹陽性の結核患者(56人)は、標準的な化学療法剤による治療に加え、アルギニン(1g/日)またはプラセボが4週間経口投与されました。その結果、プラセボ群に比べ、アルギニン投与群では体重増加、喀痰中結核菌の消失速度、咳などの症状において有意に改善が見られました。アルギニン投与群では、プラセボ群に比べ、血漿中アルギニン濃度は有意に増加しました。
 
  このように、アルギニンは活動性結核患者において、化学療法剤のアジュバントとして有用であることが示されました。アルギニンのこの効果はNOを介すると考えられました。
 
 
(3)アルギニンの摂取によって、重症(致死性)の腹膜炎を起こしたラット(ネズミ)の生存期間が有意に増加しました。これはアルギニンのT細胞活性化と免疫力増強作用によるものと考えられました(J. Surg. Res., 1988; 44: 658-663.)
 
  アルギニンは、T細胞を活性化し、免疫系を増強することから、重度で致死的な腹膜炎のラットの生存におけるアルギニンの効果を検討しました。試験1において、アルギニン(アルギニン塩酸塩100mg)を腹膜炎発症後すぐに1日2回経口投与しました。試験2においては、同量のアルギニンを、腹膜炎発症前3日間とその後継続的に1日2回経口投与しました。試験3においては、同量のアルギニンを腹膜炎発症後1日3回静脈内投与しました。試験1においては、アルギニンは全生存期間に影響しませんでした。試験2と3においては、アルギニンは生存期間を有意に増加しました。
 
  このように、アルギニンの継続的経口投与または静脈内投与によって、アルギニンは重度で致死的な腹膜炎の生存期間を有意に増加しました。これはアルギニンのT細胞活性化と免疫力増強作用によると考えられました。
 
 
(4)アルギニンやアルギニン混合物は、重症の火傷を負った動物および人において、死亡率を低下させ、臨床検査値、感染症罹患率、入院期間などを改善しました
 
①重症の火傷のモルモットに、アルギニンを火傷発症後14日間経口投与しました。その結果、アルギニンを投与しないグループに比べ、アルギニン群では死亡率の低下など火傷に対し有用な効果が見られました(Arch. Surg. 1987; 122: 784-789.)。
 
②火傷の患者において、アルギニン、システイン、およびヒスチジン等の混合物は、標準食に比べ、感染症、入院期間、死亡率などを軽減しました(J. Crit. Care Med., 1990; 18: S149-153.)。
 
③重症の火傷の患者において、アルギニンの経口投与(経腸栄養)は、対照群に比べ、胃粘膜血流および酸素化指数を有意に増加させ、動脈血中の乳酸量を有意に減少させました。また、NO生成を正常レベル近くまで低下させました(Burns, 2007; 33: 179-84.)。
 
 
(5)一酸化窒素(NO)はクラミジアによる性器感染症を抑制しました。また、アルギニン(NO)は、クラミジア性器慢性感染症による卵管水腫を抑制し、不妊を防ぐことが期待されました
 
①クラミジア感染症に対するNOの効果
 
  マウス(BALB/c)の膣内クラミジア感染モデルが用いられました。感染後4週間経過観察しました。1、2、3、4週間後の感染率は、それぞれ100、60、40、20%でしたが、このモデルに一酸化窒素(NO)合成酵素阻害剤(MLA)を投与しますと、1、2、3、4週間後の感染率は、それぞれ100、100、100、60%と感染がより長く持続しました。一方、両実験系における尿中のNO生成を比較しますと、MLA投与群では非投与群に比べNO生成量は約1/7に低下しました。これらの結果などから、NOはクラミジア性器感染症の抑制に重要な働きをしていると考えられました(Immunology, 1996; 88: 1-5.)
 
②クラミジア慢性感染症に対するアルギニン(NO)の効果
 
  マウスの膣内にクラミジア(Chlamydia trachomatis)を感染させ慢性感染症モデルを作成しました。クラミジア慢性感染症および不妊の代替マーカーとして卵管水腫を調べました。マウスは感染後56日目に剖検(解剖)しました。その結果、野生型マウス(C57BL/6)では、卵管水腫の形成率は50%でした(非感染マウスでは0%)。さらに、NOの生成を抑制したマウス(NOS2-/-またはL-NMMA処理)では、卵管水腫形成率は約90%に有意に増加しました。一方、アルギニンを投与した時、卵管水腫形成率は22%に有意に減少しました。そこで、尿中NO生成量と卵管水腫形成率とを比較しますと、NO生成量が多いほど卵管水腫形成率は低下しました。これらのことから、アルギニンは、クラミジア慢性感染症による卵管水腫を抑制し不妊を防ぐことが期待されました。そして、アルギニンの効果はNOを介すると考えられました(Infect. Immun., 2001; 69: 7374-7379.)
 
  性器クラミジア感染症は性行為によって感染しますが(現在患者数は数100万人と言われています)、自覚症状が無いことが多く放置されることが多いため慢性化しやすくなります。クラミジア感染症の慢性化によって女性では卵管水腫になり卵管がふさがれて不妊を引き起こし、男性では精路がふさがれて不妊症になります。アルギニンはクラミジア慢性感染症を防ぎます。
 
 
(6)消化器がんの手術をした患者にアルギニン(およびRNAとω3脂肪酸)を摂取させ、アルギニンを摂取しない患者と比較しました。アルギニンを摂取したグループは明らかに感染症が減少し、入院期間も短縮しました(Arch. Surg., 1999; 134: 428-433.)
 
  消化器がん(胃がん、結腸がん、直腸がん、膵臓がん)の患者(206人)に、二重盲検比較試験のもと、手術前後に、アルギニン(およびRNAとω3脂肪酸)またはプラセボを投与しました。アルギニン群(102人)または対照群(プラセボ群)(104人)には、それぞれアルギニン(およびRNAとω3脂肪酸)またはプラセボを手術前に7日間、手術後に7日間投与しました。その結果、対照群における手術後感染症は24%であったのに対し、アルギニン群のそれは11%と有意に減少しました。また、手術後入院期間については、対照群が平均12.9日であったのに対し、アルギニン群では11.1日と有意に短縮しました。次いで、術後炎症に対するアルギニン(およびRNAとω3脂肪酸)の効果を調べました。CRPおよびIL-6の血中レベルは、アルギニン群および対照群において手術後1日目に急激に増加しました。しかしながら、その増加量は対照群に比べアルギニン群で有意に低値でした。また、IL-6の血中レベルは、アルギニン群で手術後8日目にほぼ手術前のレベルに戻りましたが、対照群では高値のままでした。副作用については、アルギニン群と対照群で差はありませんでした。このように、アルギニン(およびRNAとω3脂肪酸)は、手術後の感染症を抑制し、入院期間を短縮し、手術後の炎症反応を抑制しました。
 
 
(7)外傷、手術、または敗血症でICUに入院している患者にアルギニン(およびヌクレオチド、魚油)を摂取させ、アルギニンを摂取しない患者と比較しました。アルギニンを摂取したグループでは明らかに感染症が減少し、入院期間も減少しました(Crit. Care Med., 1995; 23: 436-449.)
 
  外傷、手術、または敗血症でICUに入院している患者に、二重盲検比較試験のもと、アルギニン(およびヌクレオチド、魚油)またはプラセボを投与しました。アルギニン群(168人)または対照群(プラセボ群)(158人)には、それぞれアルギニン(およびヌクレオチド、魚油)またはプラセボを経腸投与しました。その結果、アルギニン群において、平均入院期間が有意に減少しました。また、敗血症患者において、アルギニン群の後天性感染症の頻度および平均入院期間が有意に減少しました。アルギニン群において特に問題となる副作用はありませんでした。
 
 
(8)気道感染〔主にウィルス(ライノウィルス、インフルエンザウィルス、コロナウィルスなど)が原因、風邪ウィルスの10~35%はコロナウィルスと言われています〕を繰り返す子供(2~13歳)を2グループに分け、一方にアルギニンを、他方にプラセボを60日間摂取させ効果を比較しました。アルギニンは気道感染を有意に防ぎました。アルギニンは免疫系を強化し気道感染症を防御しました(Minerva. Pediatr., 1997; 49: 537-542.)
 
  気道感染症〔主にウィルス(ライノウィルス、インフルエンザウィルス、コロナウィルスなど)が原因、風邪ウィルスの10~35%はコロナウィルスと言われています〕を繰り返す40人の子供(2~13歳)を2グループ(各グループ20人)に分け、一方にアルギニン(5歳までアルギニン塩酸塩2g/日を、それ以上の年齢では4g/日を摂取)を、他方にプラセボ(アルギニンを含まない)を60日間摂取させ効果を比較しました。アルギニンを摂取したグループの15人が感染を起こしませんでした(有効率75%)。また、感染した5人においても症状の出る頻度や強さはより軽微でした。一方、プラセボグループの感染なしは5人だけでした(有効率25%)。このように、明らかにアルギニンは気道感染を防ぎました(p<0.01)。

  次に、リンパ球に対するアルギニンの効果を調べました。アルギニン群ではプラセボ群に比べ、CD3リンパ球(T細胞)が有意に増加していました。また、CD4リンパ球(血液中に流れている白血球の一種で、感染症から体を守る働き(免疫)の中心的役割をしている細胞です。HIVはCD4リンパ球に感染して破壊し免疫を抑制します)は、プラセボ群に比べアルギニン群で有意に増加していました。

  このように、アルギニンは、免疫系を強化し気道感染症を防ぎました。

 

(9)アルギニンは、ヘルペスウィルスの増殖を抑制し、動物モデルにおいてヘルペスウィルス感染症を抑制しました

①NAITOらは、アルギニンが単純ヘルペスウィルスの増殖を直接抑制することを示しました(T Naito, H Irie, K Tsujimoto, K Ikeda, T Arakawa, and AH Koyama. Antiviral effect of arginine against herpes simplex virus type 1. Int. J. Mol. Med. (2009), 23, 495-499)

  単純ヘルペスウィルス(herpes simplex virus type 1 (HSV-1))(注1)を細胞(HEp-2細胞)に感染させ、in vitro(試験管内)でウィルスの増殖に対するアルギニンの影響を調べました(注2)。アルギニンは8mM付近からウィルスの増殖を抑制し、その増殖は25、35、50mM付近でそれぞれ1/10、1/100、1/1000に低下しました。

  同様に、アルギニンは他のウィルス(インフルエンザウィルス、ポリオウィルスなど)の増殖も抑制しました。


注1:単純ヘルペスウィルスには1型(HSV-1)と2型(HSV-2)の2種類があります。HSV-1は主として口唇ヘルペス、ヘルペス口内炎、角膜炎の原因となります。HSV-2は主として性的接触などによって感染し陰部ヘルペスの原因となります。
注2:ウィルスは単独では増殖できないので、試験管内でウィルスの増殖を測定するためにウィルスを特定の細胞に感染させます。


②動物モデルを用いてアルギニンの抗ヘルペス作用が検討されました(Ikeda et al., Arginine inactivates human herpesvirus 2 and inhibits genital herpesvirus infection. Int J Mol Med. 30, 1307 (2012). ; Ohtake et al., Arginine as a synergistic virucidal agent, Molecules, 15, 1408 (2010))

 

  HSV-2によるマウス性器(膣)感染症モデルにおいて、アルギニンの外用(膣内適用)は顕著な効果を示しました。その効果は抗ウィルス薬であるアシクロビルより効果的でした。また、HSV-1によるウサギ角膜感染モデルにおいて、アルギニンの外用は感染の発生を抑制しました。



【考察】
  アルギニンに関するいくつかの安全性情報サイトでは、『ヘルペスウイルスは増殖の際にアルギニンを必要とすることが示唆されていることから、理論的には、ヘルペスの感染症を悪化させる可能性がある』とされています(例えば、国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報の『アルギニン』の項を参照ください)。

  Beckerらの文献(Y. BECKER, U. OLSHEVSKY AND JULIA LEVITT. The Role of Arginine in the Replication of Herpes Simplex Virus. J. gen. Virol. (1967), 1, 471-478)によりますと、アルギニンは、①単純ヘルペスウィルスの増殖には必須の成分であること、②培養液からアルギニンを除くとウィルスの増殖は抑制されましたが、それにアルギニンを加えるとウィルスの増殖は促進されること、③培養液の中のアルギニンの濃度が高くなるとウィルスの増殖は促進されましたが、ほぼ0.105mMでウィルスの増殖は最大になり、それ以上アルギニンの濃度を高くしても増殖は促進されなかったこと、などが示されています。
  また、MIKAMIらは(T. MIKAMI, M. ONUMA AND T. T. A. HAYASHI. Requirement of Arginine for the Replication of Marek's Disease Herpes Virus. J. gen. Virol. (1974), 22, 115-128)、多くのアミノ酸がヘルペスウィルスの増殖に必要であり、その不足によってウィルスの増殖が抑制されたが、特にアルギニン、イソロイシン、チロシンの不足によってその増殖が強く抑制されたことを示しました。アルギニンについては、アルギニンが不足しているとき、ヘルペスウィルスの増殖は強く抑制されましたが、アルギニンを加えていくと増殖は促進され、アルギニンが0.06mMでほぼピークになりました。一方、6mM以上のアルギニンの濃度ではヘルペスウィルスの増殖は抑制されるように見えました。

  これらの結果と、上記のNaitoらの結果を併せて考えると、ヘルペスウィルスにとって、アルギニンや他のアミノ酸は、ウィルスが増殖するのに必要な栄養成分の一つと考えられます。そして、それが不足すると増殖は抑制され、これにアルギニン(や他のアミノ酸も)を補充すると増殖が促進されます。これは他の生物一般と同じです。他の生物でもアルギニンなどアミノ酸が不足すると成長が抑制されるどころか生命さえも脅かされることになります(生命の根源のタンパク質が作られなくなるため)。また、アルギニンなどのアミノ酸を補充すると成長が促進され、また生命が正常に維持されることになります。
  アルギニンについては、ヘルペスウィルスの増殖に最も適した濃度は0.06~0.105mM付近です。そして、それより高濃度(8mM付近から)では逆に増殖は抑制されるようになり、25、35、50mM付近でそれぞれウィルスの増殖は1/10、1/100、1/1000まで低下しました。

  では、人ではアルギニンはヘルペスウィルス感染にどう影響するでしょうか。ヘルペスウィルスの増殖にはアルギニンは必須ですが、上に示したようにその増殖はアルギニンの濃度が0.06~0.105mM付近でピークになります。一方、人の体の中(血液中や細胞中)でアルギニンの濃度は通常0.1~0.8mMとされ(O. Eremin, L-Arginine: Biological aspects and clinical application, Chapman &Hall, New York, 1997)、この濃度はすでにヘルペスウィルスの増殖にとって最適の濃度となっています。では、アルギニンの摂取などによってアルギニンの体内濃度がより高くなったときはどうなるでしょうか。その時は、上記のデータから考えますと、ヘルペスウィルスの増殖は影響されないか、逆に抑制される(10倍以上高くなったとき)と考えられます。
実際、アルギニンは動物モデルにおいてヘルペス感染症を抑制しました(上記文献②)。
  一方、アルギニンは免疫力を高めてウィルス(風邪ウィルス、インフルエンザウィルスなど)の感染を抑制することが知られています(Minerva. Pediatr, 1997; 49: 537-542)ので、ヘルペスウィルスについてもアルギニンは免疫系を介してその感染・増殖を抑制する可能性が高いと考えられます。

  以上のことから、人において、アルギニンを摂取することによって、『(アルギニンに関するいくつかの安全性情報サイトでいわれているような)アルギニンがヘルペスの感染症を悪化させる可能性』はほとんど無く、逆に免疫力を高めて、またアルギニンの直接作用によって、ヘルペスウィルスの感染・増殖を抑制する可能性が高いと考えられます。

 

(10)アルギニンは、人において、傷におけるコラーゲンの合成と沈着を有意に促進し、傷の改善が期待されました
 
 
①アルギニンは、人において傷の治りを促進しました(Surgery, 1990; 108: 331-336
 
  健康なボランティア(36人)において、局所麻酔下で、ポリテトラフルオロエチレンチューブが右三角筋部分に皮下的に挿入されました。ボランティアはそれから3つのグループにランダムに分けられました。グループ①にはアルギニン塩酸塩30g/日(アルギニンとして24.8g/日)を、グループ②にはアルギニンアスパラギン酸塩30g/日(アルギニンとして17g/日)を、グループ③にはプラセボをそれぞれ2週間摂取させました。2週間後にそのカテーテルは取り外されました。そして、ヒドロキシプロリン(新しいコラーゲンの合成と沈着の指標として)の量が測定されました。その結果、アルギニンの摂取は、傷に沈着したコラーゲンの量(ヒドロキシプロリンの量によって評価)を、プラセボの摂取に比べ、有意に増加させました。沈着したコラーゲン量(ヒドロキシプロリン量として)は摂取したアルギニン量の増加と共に増えることが示されました〔グループ③に比べ、グループ①で236%(p<0.001)、グループ②で174%(p=0.028)〕。これらの結果は、アルギニンは傷の治りを改善することで臨床的に有用であると考えられました。
 
②アルギニンは、高齢者(65歳以上)において傷の治りを促進しました(Surgery, 1993; 114: 155-160.
 
  高齢(65歳以上)の健康なボランティア(30人)に、二重盲検比較試験のもとで、アルギニンアスパラギン酸塩30g/日(アルギニンとして17g/日)またはプラセボ(15人)を2週間摂取させました。これらの被験者に、ポリテトラフルオロエチレンカテーテルが右三角筋部分に皮下的に挿入されました。試験後、カテーテルは、タンパク質量、ヒドロキシプロリン(修復コラーゲン合成の指標として)量等が測定されました。その結果、アルギニンの摂取は、傷に蓄積したヒドロキシプロリン量(プラセボに比べ152%増加)とタンパク質量(プラセボに比べ198%増加)を有意の増加させました。このように、アルギニンは、高齢者において、傷の治りを改善すると考えられました。
 
(11)アルギニンは従来の薬では治癒できない裂肛(切れ痔)に対して、副作用の問題なくこれを治すことができました(Gosselink MP, Darby M, Zimmerman DD, Gruss HJ, Schouten WR. Treatment of Chronic Anal Fissure by Application of L: -Arginine Gel: A Phase II Study in 15 Patients. Dis Colon Rectum. 2005 Mar 2; [Epub ahead of print] )
 
  裂肛(切れ痔)は、肛門圧と肛門の血流を改善することで改善されますが、これまでの薬物は効果や副作用の点で問題がありました。
 
  アルギニンは一酸化窒素を生成して肛門圧を下げ(排便を容易にする)、肛門の血流を高める(傷の治りを早める)ために裂肛の治療薬として有望です。また、副作用の心配もありません。
 
  慢性の裂肛(切れ痔)で従来の薬で効果が見られなかったり、副作用で治療できない患者(15人)を対象として、アルギニン(ゼリー状にしたもの)を1日5回肛門に塗布しました。その結果、12週間後には23%の患者の裂肛が治癒しました。18週間後には62%の患者が治癒しました。副作用は見られませんでした。アルギニンの投与によって、患者の肛門圧は有意に低下し、肛門上皮の血流は有意に増加しました。
  このように、アルギニンは従来の薬では治癒できない裂肛(切れ痔)に対して、副作用の問題なくこれを治すことができました。
 
(古賀のコメント)
  私も約35年前に、デスクワークが多くなったとたん、痔に悩まされるようになりました。症状は、排便すると痛みとともに便器が真っ赤になるほどの出血でした。そのうちだんだんひどくなってきて、痔核(いぼ痔)も出るようになりました。医者の診断は内痔核の第三~四度で手術を勧められましたが、手術はいやで市販の痔の薬でごまかしていましたが、それもだんだん効かなくなってきていました。そして、排便時だけでなく常にお尻が痛むようになりました。ところが、約25年前にアルギニンを1日2~4g飲むようになったところ、半年位したら排便時の出血と痛みはほとんど無くなりました。医者に診てもらったところまだ完全には治ってないがかなり改善しているとのことでした。その後、アルギニンを飲み続けて約1年後に医者に診てもらったところほぼ完全に痔は治っているとのことでした。
このように、アルギニンは局所投与だけでなく飲んでも痔を治します。アルギニンは肛門の血流を改善し、肛門圧を下げて排便しやすくするだけでなく、感染症にかかりにくくします(免疫を高めて)のでいろんなタイプの痔に効果が期待できます。
 
 
(12)イタリアおよび米国の研究者(医者ら)は、アルギニンが、プラセボに比べ、中等症~重症の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の患者の呼吸レベルを有意に改善し、入院期間をほぼ半分近くまで有意に減少させ、死亡率を低下させることを示しましたFiorentino et al., Effects of adding L-arginine orally to standard therapy in patients with COVID-19: A randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group trial. Results of the first interim analysis, EClinicalMedicine, 2021, Sep 9;101125.)。
 

  臨床的あるいは非臨床的知見は、血管内皮細胞が新型コロナウィルス感染症の鍵となる標的であり、本感染症は内皮障害による多臓器にわたる全身の血管病と考えられることを示しています。また、本感染症、特に重症例においては、アルギニンを分解するアルギナーゼ活性の上昇に伴う血漿アルギニンレベルの減少が報告されています。アルギニンは、内皮機能に有用な効果を示すことが知られているために、彼らはアルギニンの投与が本感染症の改善に有用ではないかと考えました。

【研究デザインと参加者】

  本研究は、プラセボ対照の二重盲検比較試験で行われました。対象の患者は、入院中、男女、18歳以上、新型コロナウィルスに対するRT-PCR陽性でした。この中から、次の選択基準でスクリーニングしました。

選択基準

・胸部画像にて肺炎

・酸素飽和度≦93%(中等症II~重症に相当)

・PaO2/FiO2≦300(PaO2:動脈血酸素分圧、FiO2:吸入中酸素濃度)

・リンパ球減少症(リンパ球<1500/μLまたは白血球の<20%)

除外基準(省略)(興味のある方は論文を参照ください)

 

【方法】

  患者は2群に分けられました(アルギニン群45名、プラセボ群45名)。アルギニン群には1.66gのアルギニンを1日2回入院期間中経口摂取させました。プラセボ群には同様にプラセボを摂取させました。呼吸補助は次のように定義されました(重症度の高いものから低いものへ、NIV(非侵襲的換気療法)→CPAP(持続陽圧呼吸療法)→HFNC(高流量鼻カニュラ酸素療法)→LTOT(長期酸素療法))。

 

【研究の目的】

  主要評価項目は呼吸補助におけるレベルの低下(すなわち、より軽症レベルへの移行:NIV→CPAP→HFNC→LTOT→室内気)(ランダム化後10日目と20日目に評価)。

  二次評価項目は、入院期間の長さ、リンパ球数の正常化への期間、RT-PCR陰性化への期間です。

 

【結果】

  参加者は、症状発現後、平均7.8日で治療を受けました。すべての参加者は酸素吸入を受けていました。参加者の年齢は平均57~66歳でした。合併症は高血圧(31~42%)、冠動脈疾患(11~18%)、肥満(9~11%)、糖尿病(9~11%)でした。症状は、無力症(91~93%)、呼吸困難(96%)、咳(29~33%)、発熱(73~76%)、喀痰(2~9%)でした。PaO2/FiO2は155~162でした。併用薬は、レムデシビル(24~31%)、低分子量ヘパリン(91~93%)、ステロイド(100%)でした。

  主要評価項目である呼吸補助のランダム化後(治療開始後)10日目の軽減移行率は、アルギニン群で71.1%で、プラセボ群で44.4%であり、アルギニン群で有意に軽減移行率が高くなりました(p<0.01)。一方、20日目の評価では、アルギニン群とプラセボ群で有意な差はみられませんでした。

  一方、PaO2/FiO2比は10日目の評価では、アルギニン群228.3、プラセボ群186.4で、アルギニン群で有意に改善していました(p=0.02)。しかし、20日目の評価では有意な差は認められませんでした。

  二次評価項目については、アルギニン群における退院までの期間は、プラセボ群に比べ、ほぼ半分まで有意に短縮されました(中央値:アルギニン群25日、プラセボ群46日)(p<0.001)。(なお、アルギニン群においては入院後30日目ごろまでにほぼ全員が退院しました。一方、プラセボ群では全員退院するには60日かかりました)。

  一方、リンパ球数の正常化速度およびRT-PCR陰性化までの期間は両群間で有意差は見られませんでした。

  試験期間中(20日後まで)の死亡者は、プラセボ群で3名(6.7%)で、アルギニン群で0名(0%)でした。また、ランダム化後試験開始前の患者も含めると(これらの患者は試験には参加していませんでした)、死亡者は、プラセボ群で計11名(20.8%)、アルギニン群で計3名(6.3%)でした(p=0.035)。

  重篤な副作用は、プラセボ群で3件(縦隔気腫、膵炎、肺血栓塞栓症)、アルギニン群で1件(気胸)に見られましたが、医師によって本試験とは関連性はないと考えられました。

 

【考察】

  重症の患者を含む新型コロナウィルス感染症(CVID-19)のランダム化臨床試験において、標準治療+アルギニン経口摂取は、標準治療のみ(標準治療+プラセボ)の場合に比べ、呼吸補助に対する必要性を大幅に改善し、入院期間を大幅に減少させ、死亡率も低下させるという、極めて優れた結果を示しました。なお、アルギニンによると考えられる重篤な副作用はありませんでした。アルギニンの安全性は種々の研究によって既に確認されています。なお、ランダム化後(治療開始後)10日目の評価では呼吸補助の軽減移行率がアルギニン群で有意に改善したのに、20日後の評価では有意差が見られなかったのは、アルギニン群では20日目ごろまでに改善した患者はどんどん退院していったために、より少数の重症の患者のみが残っていたためと考えられました。

  一方、リンパ球減少症の正常化への期間およびRT-PCR陰性化までの期間には、アルギニンによる有意な改善はありませんでした。これは、アルギニン摂取までに症状発現から平均7.8日経過していること、すべての患者が酸素吸入療法を受けていることなどから、アルギニンの摂取開始が遅すぎた可能性が考えられます。新型コロナウィルス感染症においては、発症後数日はウィルス増殖が、そして発症後7日前後からは宿主免疫による炎症反応が主病態であるために(「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第8版」(2021年7月31日)、日本感染症学会)、アルギニンの抗ウィルス作用を見るためには発症初期あるいは予防的に投与する必要があると考えられます。

  アルギニンの、重症新型コロナウィルス感染症の改善作用のメカニズムに関しては以下のように考えられます。

  重篤な新型コロナウィルス感染症患者において骨髄由来抑制細胞(MDSC)が増加します。それによってアルギナーゼの産生が促進されます。増加したアルギナーゼはアルギニンを分解し全身のアルギニンを減少、枯渇させます。アルギニンは、血管内皮細胞をコントロールして血管の正常化を維持し、また、T細胞の増殖や活性化を促進しますので、その減少や枯渇は内皮細胞を障害し、T細胞を減少させます。内皮障害は全身の血管病(微小血管障害、血栓形成など)を引き起こし、血管炎や血栓症、脳梗塞、心筋障害などを生じます。一方、T細胞の減少は、T細胞の機能不全を引き起こし、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-αなど)を増加させサイトカインストームを引き起こすと考えられます。このサイトカインストームがCOVID-19における急性呼吸促迫症候群(ARDS)などを引き起こしていると考えられます。

  アルギニンは、内皮障害を改善します。アルギニンは、T細胞を増殖、活性化します。アルギニンは、敗血症モデルの肺において顕著に増加した炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-α)レベルを有意に抑制しました。一方、抗炎症性サイトカイン(IL-10、TGF-β1)レベルは有意に増加させました。また、肺の組織学的検査において、敗血症モデルに見られた、中隔スペースの肥厚、肺胞構造の破壊、好中球浸潤、浮腫、充血、うっ血、肺胞内出血、点在した肺実質片などの炎症性障害は、アルギニンの投与によって顕著に軽減していました。このように、アルギニンは、その内皮障害改善作用と、T細胞の増殖、活性化作用によるサイトカインストームの抑制によって、重症の新型コロナウィルス感染症を改善し、呼吸機能の改善、入院期間の短縮、死亡率の減少などを引き起こしたものと考えられました。

 

【アルギニンを新型コロナウィルス感染症対策に使用する場合のメリットとデメリット】

◎メリット

アルギニンは、新型コロナウィルスに感染した早期に摂取することによって、重症化を防ぎ、退院が大幅に早まり、死亡を防ぐことが期待できます。

・アルギニンの、中等症II~重症の新型コロナウィルス感染症に対する改善効果は、現在開発中の薬剤に比べても、同等以上の効果があるのではないかと考えられます(「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第8版」(2021年7月31日)、日本感染症学会)

・経口摂取できます。

・医薬品ではないので安いし、すぐに誰でも入手できます。

・アミノ酸ですので安全性に問題はありません。

・かなり明確に効果が期待できます。

・使いやすいので、かなり早期から、あるいは予防的に使用できます。

 

◎デメリット(または今後の課題)

・アルギニンの抗ウィルス活性を調べるために、予防的、あるいは早期投与の試験が必要です。 

 

トピックス
(新型コロナウィルスに関する重要情報)

●2022年8月17日
★アルギニンは新型コロナウィルス感染症の後遺症(COVID-19罹患後症状)を劇的に改善することが示されました。
●2021年9月30日
アルギニンは、中等症~重症の新型コロナウィルス感染症の患者の呼吸状態を改善し、入院期間をほぼ半減し、死亡率を低下させました!

トピックス

●2020年7月27日
★本日、アルギニンで初めて、アルギニン(単成分)を機能性関与成分とする機能性表示食品(弊社開発品)の届出が受理されました。

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