アルギニンは、新型コロナウィルス感染症の後遺症(COVID-19罹患後症状)を劇的に改善することが示されました

  新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は、2019年より世界的に大流行し、多くの人的損害とともに、経済的にも多大な打撃を与えています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対しては現在種々のワクチンや治療薬が開発されてきており、感染や重症化の抑制にそれなりの効果を示してきています。

  一方、感染後の後遺症(COVID-19罹患後症状)(「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネージメント・第1.1版」(2022年6月)参照)につきましては、その発症機序については不明な点が多く、その治療に関しても確立した治療法はなく、対症療法が中心となっています。

  罹患後症状とは、新型コロナウィルス感染後(罹患後)、感染性は消失したにもかかわらず、他に明らかな原因がなく、急性期から持続する症状や、あるいは経過の途中から新たに、または再び生じて持続する症状全般をいいます(「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネージメント・第1.1版(2022年6月)参照)。代表的な罹患後症状として、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、不眠、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などが示されていますが、その症状は全身に及び、このことは新型コロナウィルスが感染後全身に障害をもたらすことを示しています。頻度については、海外の報告では、COVID-19の診断/発症/入院後2カ月あるいは退院/回復後1カ月を経過した患者では、72.5%が何らかの症状を訴えていました。多い症状としては、倦怠感(40%)、息切れ(36%)、嗅覚障害(24%)、不安(22%)、咳(17%)、味覚障害(16%)、抑うつ(15%)などでした。さらに別の海外の報告では、診断あるいは退院後6カ月かそれ以上で何らかの症状を有するのは、54%と報告されています。

  罹患後症状の病態機序としては不明な点が多く、ウィルスに感染した組織(特に肺)への直接的な障害、ウィルス感染後の免疫調節不全による炎症の進行、ウィルスによる血液凝固能亢進と血栓症による血管損傷・虚血、ウィルス感染によるレニン・アンジオテンシン系の調節不全、重症者の集中治療後症候群などがあげられています。

  そのような中で、Santulliらは(文献1、2020年春に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)と血管内皮細胞障害との関連性、すなわち、COVID-19の全身症状と血管内皮細胞とが直接的または間接的に関係しているのではないかという考えを最初に提唱したグループの一つでした。この考えはその後他の研究者によっても支持されました。実際、血管内皮細胞は、細胞への新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の内部移行に必要な全ての補因子(アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)など)を発現しており、そのため、新型コロナウィルスの標的となります。このように、新型コロナウィルスは、肺の上皮細胞のみならず、全身の血管内皮細胞にも感染し、全身性の血管内皮細胞障害を引き起こします。血管内皮細胞は、血管の恒常性(ホメオスタシス)の維持や、血管の緊張の調節に重要な役割を果たすことが知られています。新型コロナウィルス感染とそれに続く炎症によって直接引き起こされた血管内皮細胞障害は、血管の緊張性を変化させ、血管透過性を亢進して浮腫を引き起こし、血液は凝固しやすくなり血栓塞栓症を引き起こします。これらの知見の大半は、世界的大流行の発生以来、コロナウィルス感染症の患者の剖検によって実証されてきました。COVID-19においては血管内皮細胞が中心的役割を果たすだろうという彼らの理論をさらに支持するものとして、血管内皮細胞障害を有する患者(例えば、高血圧、喫煙、高血糖、肥満、心血管病など)では、COVID-19に特に脆弱で、重症化しやすいことが知られています。一方、血管内皮細胞障害を改善する治療法がCOVID-19の患者に有益な効果を示すかどうかを検討する臨床試験は現在進行しています。

  彼らは以前(2021年)、COVID-19入院患者にアルギニンを経口投与するランダム化試験において、大変有望な中間結果を得ました(主として急性期症状に対する効果)(本ホームページのアルギニンは、中等症~重症の新型コロナウィルス感染症の患者の呼吸状態を改善し、入院期間をほぼ半減し、死亡率を低下させました!」をご参照ください)。

  アルギニンは、血管内皮細胞に存在する酵素(内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS))の基質となるアミノ酸です。アルギニンは血管内皮細胞機能を改善することが示されていますので、このことはCOVID-19患者においてそれを使用する強い根拠となります。加えて、免疫反応の調節におけるアルギニンの有用な効果が報告されています。(筆者(古賀)注:アルギニンは、血管内皮細胞において、eNOSの働きで一酸化窒素(NO)に変換されますが、アルギニンの血管内皮細胞機能改善作用は主にNOの働きによると考えられています)。同様に、最近の臨床研究において、ビタミンCは、種々の侵襲要因による酸化的不均衡や血管再構築を改善し、血管内皮細胞バリアーの透過性を減弱することが示されています。そこで、ビタミンCの抗酸化作用と血管内皮細胞透過性保護効果が、感染後後遺症の回復に特に効果的であろうと考えられました。(筆者注:先に、アルギニンの血管内皮細胞機能改善作用は主にそれから生成されるNOによると考えられることを示しましたが、NOは酸化に弱く、活性酸素によって容易に分解されたりその生成が抑制されたりすることから、本研究におけるビタミンCの働きは、上記の作用に加え、その抗酸化作用によって、NOの分解を抑制したり、NOの生成を促進することによって、NOの働きを高めて、アルギニンの血管内皮細胞機能改善作用を高めることと考えられます。)。

  これらのことから、Santulliらは、COVID-19後遺症に対する、アルギニンとビタミンCの併用効果を評価する研究を計画しました文献1

 

Santulliらは、アルギニンおよびビタミンCの併用が、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の後遺症(COVID-19罹患後症状、または罹患後症状)を劇的に改善することを示しましたIzzo, R. et al., Combining L-Arginine with Vitamin C Improves Long-COVID Symptoms: The  LINCOLN Survey, Pharmacological Research, 183, 106360 (2022))。

 

【まとめ】

・アルギニンとビタミンCを併用することによって、アルギニンは血管内皮細胞機能を改善することで、ビタミンCは主にその抗酸化作用でアルギニン(一酸化窒素、NO)の効果を高めることで、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の後遺症(罹患後症状)に有用な効果を示すと考えられました。

・全国的な多施設臨床研究が計画され、アルギニン(+ビタミンC)またはマルチビタミンがCOVID-19後遺症関連症状を有するCOVID-19生存者へ投与されました。

・1390人の患者はアルギニン(+ビタミンC)群とマルチビタミン群に分けられました。

・1ヶ月投与後、アルギニン(+ビタミンC)群の患者は、マルチビタミン群に比べ、罹患後症状の顕著な改善を示しました。

・アルギニンは経口摂取できます。医薬品ではないので安いし、すぐに誰でも入手できます。アミノ酸ですので安全性に問題はありません。使いやすいので、かなり早期から、あるいは予防的に使用できます(おすすめのアルギニンサプリメントはこちらを参照ください)。

 

【研究方法】

①研究デザインと患者

  研究の評価項目は患者の年齢、性、RT-qPCR検査の陰性化からの日数、中等度ないし重度の新型コロナウィルス感染症による入院です。さらに、罹患後症状(疲労感、呼吸困難、胸部圧迫感、めまい、消化管疾患、頭痛、嗅覚消失、集中力欠如、不眠)について、その症状の強さに応じて1(無症状)、2(中等度の症状)、3(重度の症状)の三段階で評価されました。最後に、呼吸困難の程度は修正Borgスケールが用いられました。

  登録された患者は、少なくとも4週間、RT-qPCR検査によって新型コロナウィルス陰性であることが確認された、COVID-19の生存者の2グループでした。最初の患者群(869人)には、1日にアルギニン1.66gおよびリポソーム化ビタミンC500mg入りのバイアルを2本摂取させました(アルギニン群)。他の群(521人)には、マルチビタミン(ビタミンB1、ビタミンB2、ニコチンアミド、葉酸、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12)を摂取させました(マルチビタミン群)。摂取期間は30日間でした。

 

②選択基準と除外基準

  適格患者は、18歳以上の男性および非妊娠の女性で、次の適格基準でスクリーニングされました。

・選択基準

  RT-qPCRによって確認されたCOVID-19の感染歴。

  少なくとも4週間、RT-qPCR検査によって確認されたCOVID-19陰性化。

  最初の感染後4週間以上続くCOVID-19後遺症(罹患後症状)の存在。

・除外基準(省略)(興味のある方は論文を参照ください)

 

【研究の目的】

  アルギニン(+ビタミンC)の摂取によって、現在、効果的な治療法(や薬剤)がほとんど無い、罹患後症状が改善するかどうかが検討されました。

 

【結果】

  最初に、1590人の患者が登録されました。その中から1390人が適格基準を満たしました。ついで、これらの患者をアルギニン群(869人)とマルチビタミン群(521人)に分けました。これら2群間で年齢(55.4~55.5歳)、男性比率(49.8~51.8%)、COVID-19による入院率(7.9~9.2%)、新型コロナウィルス陰性化からの期間(31.5~33.8日)において有意な差はありませんでした。

  試験30日後において、アルギニン群は、マルチビタミン群に比べ、検討された罹患後症状の全てにおいて有意に症状を改善しました(P<0.0001)(表1)。また、罹患後症状のいくつかにおいてその改善度は劇的でした(疲労感、呼吸困難など)(表1)。

  また、呼吸困難の程度は(修正Borgスケール)、マルチビタミン群に比べアルギニン群において有意に低値でした(改善されました)(呼吸困難の程度はマルチビタミン群の「強い」に比べ、アルギニン群では「やや弱い~弱い」でした)(P<0.0001)

 

表1.罹患後症状に対するアルギニン(+ビタミンC)の効果

  症状 マルチビタミン群

アルギニン

疲労感 なし(%) 0.4 94.9 <0.0001
中等度(%) 5.2 4.0
重度(%) 94.4 1.1
         
呼吸困難 なし(%) 5.4 74.2 <0.0001
中等度(%) 55.1 25.4
重度(%) 39.5 0.4
         
胸部圧迫感 なし(%) 26.3 86.1 <0.0001
中等度(%) 50.9 13.4
重度(%) 22.8 0.5
         
めまい なし(%) 66.6 87.3 <0.0001
中等度(%) 25.9 11.6
重度(%) 7.5 1.1
         
消化管疾患 なし(%) 63.3 87.7 <0.0001
中等度(%) 26.7 11.7
重度(%) 10.0 0.6
         
頭痛 なし(%) 39.2 81.8 <0.0001
中等度(%) 44.1 16.8
重度(%) 16.7 1.4
         
嗅覚消失 なし(%) 52.0 87.2 <0.0001
中等度(%) 34.0 11.0
重度(%) 14.0 1.8
         
集中力欠如 なし(%) 32.8 79.1 <0.0001
中等度(%) 46.8 19.4
重度(%) 20.4 1.5
         
不眠 なし(%) 39.5 80.7 <0.0001
中等度(%) 42.6 17.5
重度(%) 17.9 1.8

 

【考察】

  本研究は、新型コロナウィルス感染症の後遺症(COVID-19罹患後症状)に対し、アルギニン(+ビタミンC)が効果を示すことを示した最初の報告です。本研究者らの研究は、強固な理論的根拠、すなわち、罹患後症状における血管内皮細胞障害を標的にしていることに基づいています。実際、継続的な炎症細胞の動員と血管内皮細胞障害を伴う新型コロナウィルスの血管内皮細胞感染が、COVID-19における血管床にみられる微小循環障害とそれが引き金になって引き起こされる血管収縮、虚血、および前凝固状態を説明することができます。本研究者らの考えと一致して、何人かの研究者が、血管内皮細胞障害が、罹患後症状を示す患者における種々の血管床において観察された全身性の微小循環機能障害の根底となる決定的なメカニズムであると提案しました。

  注目すべきは、最近の臨床研究によって、COVID-19患者が血管内皮細胞障害を発現し、その障害が、6カ月の追跡調査において、健常人と比較して、持続していたということが示されました。このことは、血管内皮細胞障害が、COVID-19の急性症状と慢性症状(罹患後症状)の両方の主な原因であることを示唆しています。

  興味あることに、循環系中の血管内皮細胞の数の増加(血管障害の生物学的指標)(恐らく、病的傷害により血管壁からはがれた)と、COVID-19の重症度が有意に相関することが見出されました。驚くことに、循環系中の血管内皮細胞の増加した状態は、回復したCOVID-19の回復期の患者においても持続していました。このことは、血管内皮細胞機能における新型コロナウィルス感染症の長期的な有害作用を示しています。血管内皮細胞障害の実際の兆候(グリコカリックスの損傷によって示された)は、入院しない軽症で進行した回復期の患者においても報告されました。他の研究は、持続性の血管内皮炎が、回復期のCOVID-19患者において普通にみられること、そして、COVID-19後遺症(罹患後症状)、特に非呼吸器系の症状は、主に持続的な血管内皮細胞障害が原因であるということを明らかにしました。

  本研究者らのデータは、COVID-19の急性期後、本疾患は免疫病理学的炎症誘発性要素によって支配されているということを暗示する以前の報告と十分に一致しています。実際、以前の研究は、アルギニンの減少は活性酸素の生成を増やし、炎症を悪化させるということを示しています。加えて、試験管内試験において、T細胞の増殖能はCOVID-19患者において有意に低下し、それはアルギニンの補充によって回復することができるということが明らかにされました。重症のCOVID-19患者において、骨髄由来免疫抑制細胞の増加が見られ、そして、それはアルギナーゼ活性の増加と直接相関します。アルギナーゼは、アルギニンを代謝し、オルニチンと尿素を生成し、アルギニンを減少させます。他の最近の研究では、アルギニンレベルと血小板活性化との間に逆相関の関係があることが示されました。血小板の活性化はCOVID-19の血栓塞栓性合併症の主原因です。血管内皮細胞に存在するeNOS(内皮型一酸化窒素合成酵素)は、アルギニンを基質(原料)として、生理学的レベルの一酸化窒素(NO)を生成します。アルギニンの血管内皮細胞保護作用は、主としてこのNOによるものと考えられます。NOには、血管拡張作用、血小板凝集抑制作用(抗血栓作用)、抗酸化作用、血管保護作用などがあり、血管内皮細胞の働きを調節して血管を保護します。

 

【本研究に対する著者(古賀)のコメント】

・本研究の結果に加え、新型コロナウィルス感染症に対する、本研究者らの以前の臨床研究結果(本ホームページのアルギニンは、中等症~重症の新型コロナウィルス感染症の患者の呼吸状態を改善し、入院期間をほぼ半減し、死亡率を低下させました!」をご参照ください)を合わせて考えますと、アルギニンは、新型コロナウィルス感染症を予防し、その重症化を防ぎ、その後遺症を改善する現在唯一の薬剤(成分)であると考えられます。

・本研究によりますと、新型コロナウィルス感染症の後遺症(罹患後症状)に対しアルギニンの摂取量は1日3.3g程度です。しかしながら、アルギニンそのものを摂取すると種々の問題点がありますので、アルギニン+シトルリンをおすすめします。アルギニン(1g)+シトルリン(1g)を摂取しますと、ほぼアルギニン3.4g程度(アルギニンの血中濃度に換算して)に相当しますのでこれで十分と考えられます。

・本研究では、アルギニンに加え、ビタミンCを併用していましたが、ビタミンCはアルギニンの働きを増強することが知られています(NOの生成や働きを増加したり増強すると考えられます)(資料1)。ビタミンCの摂取量については、本研究では1日1,000mgでしたが、我々の調査検討では1日100~200mgで良いと考えられます。

・望ましいアルギニンサプリメントにつきましては「資料2」をご覧ください。

 

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トピックス
(新型コロナウィルスに関する重要情報)

●2022年8月17日
★アルギニンは新型コロナウィルス感染症の後遺症(COVID-19罹患後症状)を劇的に改善することが示されました。
●2021年9月30日
アルギニンは、中等症~重症の新型コロナウィルス感染症の患者の呼吸状態を改善し、入院期間をほぼ半減し、死亡率を低下させました!

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●2020年7月27日
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